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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

どこまで続くか 円安・株高

年初から外国人投資家が1兆円を超えて日本株を買い越し、国内個人投資家が売り越している。特に、外国人投資家は4月以降、積極的に日本株を買っている。その背景には、基本的に原油安・ドル高がある。多くのヘッジファンドは米ドルロング、米株ショートに加え、円ショート・日本株ロングのポジションを取り、これが円安・株高の主要因と思われる。特に、5月21日から円安トレンドが際立っている。

 

FT紙(6月2日付)”Japanese currency pierces Y125 barrier as slides deepens”, Leo Lewis記者

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/769602d4-08f5-11e5-881f-00144feabdc0.html#axzz3btAxUIeQ

 

さて、先週辺りからギリシャ情勢への懸念が高まっている。先週、フランスの有力紙ルモンドがギリシャのイプラス首相とのインタビュー記事を掲載した。その内容によるとギリシャには支払う意図が感じられず、ギリシャ危機を見越して米国、ドイツ、フランスから資金が流出し、その一部が日本の株式市場へ流入したようだ。

加えて、これまでの円キャリー・トレード(低金利の円で資金調達して高金利通貨に投資する)から、ユーロのマイナス金利を利用したユーロ・キャリー・トレードにシフトしたことで、円は調達通貨としての役目を終え、需要が縮小したことも円安要因の一つと思われる。

外国人投資家の中には、グローバルマクロ系ヘッジファンドのような短期的な投資マネーとは異なり、日本の将来と成長を前向きにとらえる動きもある。ある米国のファンドマネジャーは安倍内閣の長期安定性を評価し、日本株への投資理由として以下のような点をあげている。

他の株式市場と比べて日本の株価が割安である。コーポレート・ガバナンスが大幅に改善し、企業の透明性が増している。配当性向、自己資本利益率が改善し、自社株買戻しも株価を高めている。大きなトレンドとしてGPIFなど政府系巨大基金が債券から株式へと動き出したことも相場にプラスとなっている。加えて、数々の改革や規制緩和も株式市場全体にプラスと評価できる。農業改革、移民政策の見直し、労働市場の柔軟性を高める緩和策、ウーマノミックスなど女性の社会進出支援策、エネルギーの規制緩和の動きも評価できる。総じて、日本株を買い越している海外投資家は、アベノミクスを前向きにとらえ、政策実現への期待を捨てていないようだ。

外国人投資家マネーが日本市場に投資してくれるような状況はいつまで続くのか。現政権が海外マネーの期待を裏切ることになれば(政権の流動化、日銀の政策の失敗など)、マネーは去って行くだろう。また、金融緩和という現行の前提条件が終わる時、つまり、FRBのゼロ金利解除など引締め策に転じ、自国の株式相場が下がる時に海外マネーは日本を後にするだろう。この二つの事態は同時多発的に起こる可能性がある。

 

一方、国際金融市場は今週金曜日を注視している。5月の米国雇用統計の発表がある。雇用情勢はFRBの利上げのタイミングを見るうえで重要な指標となるだろう。さらに、金曜はギリシャのIMFへの3億ユーロ支払い期限である。ギリシャが支払えない場合、EUは緊急流動性支援(ELA)を取払う可能性もある。その場合、ギリシャは資本統制を強いられ、ユーロ市場の一時的な不安定化も避けられないだろう。

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