ギリシャのデフォルトやユーロ圏離脱の可能性について、ギリシャは資本統制と銀行閉鎖でモラトリアム状態である。市場は既に、以下のようなマーケット・リスクを織り込んでいる。
第一に、欧州連合(EU)に加盟していないスイス、そして、EU加盟国でユーロを導入していない英国の動向が注目である。今年1月にチプラス政権が誕生したとき、ギリシャ国民は緊縮財政の終わりに期待をかけた。それまでの対ユーロでスイスフラン(CHF)高に対して、スイス中央銀行(SNB)は為替介入し(CHF売り・ユーロ買い)、急激なCHF高にならないよう上限を定めていた。しかし、原油安・ドル高で相対的にCHFが弱くなり、SNBは素早く上限撤廃に動いた。英国もまた、EU離脱に向けて動き出す可能性がある。
第二に、ユーロ・キャリートレードの巻き戻しがどこまで続くか。これまでマイナス金利のユーロで借り入れ、より高利回り通貨に投資する取引が行われてきたが、ギリシャ危機が深刻化するにつれ、トレーダーは高利回り通貨を売り、ユーロを買い戻すリスク回避の行動に出る。マーケットは短期的にはユーロ高に動くが、マクロ的にみて今後ユーロ圏全体の経済成長が鈍化する恐れがある。
第三に、レポ・トレーディングの「ヘアカット」(割引率)の拡大がどの程度起こるか。金利変動リスクが高まると貸し手は担保価値の割引率を上げるため、借り手は同じ資金量を調達するのにより多くの担保を差し出す必要に迫られる。金融危機が起こると市場参加者は一斉に安全資産へ逃避する。その際、平時のヘッジ手段の効力がなくなり、市場参加者が一斉にパニックに陥り、損失が膨らむ。ギリシャ国債を始め、リスクの高いユーロ圏のソブリン債へ投資しているヘッジファンドがロシア危機やリーマンショックの時に匹敵する損失から逃れられるかどうか。
以上のリスクは、過去から多くを学習した市場参加者や規制当局にとって想定内である。ギリシャがユーロ圏に留まるには、自国の徴税権など主権の一部を担保として差し出さなければならず、その是非については、7月5日(日)に行われる国民投票の結果を待つしかない。
仮にギリシャ国民がユーロ圏離脱を望んだとしても、現状ではドラグマの信認は地に落ちており、ドラグマを大量に刷らなければユーロや米ドルと交換できず、ギリシャ経済はインフレと品不足でさらに疲弊するだろう。ギリシャ国内の政治不安は、市場参加者のコントロールを超えた想定外のリスクとなる。
さて、中国では上海総合株式指数はピーク時から20%下落し、さらに20%下落が予想されており、株式バブル破綻への懸念が拡がっている。多くの人々が投機的な思惑から株式市場に参加しているため、株価急落で追証に追い込まれるなど、個人投資家の不安が深まっている。以前から、中国政府はシャドーバンキングなど金融不安の払拭に動いて来たが、今後AIIBを主導し金融自由化を目指す中国にとって、株式バブルの破綻リスクにどう立ち向かうのかが注目である。
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