マーケットの方向感は、各国の通貨・金融政策に左右されてきた。8月後半以降のマーケットは「下げては半戻し」を繰り返している。この動きが複雑に加速する年末にかけて筆者は警戒感を強めている。
企業の財務担当者は、銀行のお付き合いでの為替関連商品には手を出すべきではないし、輸入材については当面、当用買いにすべきだろう。
Fed Fatigue
8月11日の人民元切り下げを皮切りに始まったマーケットの混乱はやや納まり、新興市場の落ち込みも9月には1割ほど取り戻した。そして、中国リスクから、米国中央銀行FRBは利上げを先送りする姿勢を示し、年内の利上げすら遠のいている感がある。いつになったらゼロ金利解除になるのか、マーケット参加者はそのタイミングを推し量ることに奔走し、「Fed疲れ」がストレスになっている。
中国経済のスローダウンやギリシャ危機、ウクライナ情勢の不安定化、IS(「イスラム国」)、アフガニスタン、イスラエル、シリア難民等の問題は、昨年からずっと通奏低音のように国際金融市場には鳴り響いていた。通貨安競争や通貨戦争、そして各国中央銀行の金融政策の行方には常に注目が集まり、国際情勢に加えて主要経済指標が発表されるたびに、マーケットは神経質に反応して来た。しかし、利上げ先送りが長引き、マーケットには疲労感が漂い、何か重大事が起こっても反応が見えて来ない一種の無感覚・鈍感が感じられる。これは「嵐の前の静けさ」ではないだろうか。
中国から資本流出
FT紙によると、中国の外貨準備高は、ピーク時2014年6月で4兆ドル、現在3.5兆ドルで、年初来8月末までに5千億ドルが流出している。一方、UBS社のエコノミストの試算では、中国外貨準備高は1.4兆ドルの米国債プラス8千億ドル(日本国債、英国債、欧州の国債)で合計2.2兆ドルと、公式発表された数字よりもずっと少ない。
中国政府は今後3年かけて1兆RMB(人民元)ずつ投資していくと発表し、なんとか国内景気の底上げを図ろうとしている。今週、習近平首相は訪問先の英国で520億ユーロの投資を行うと発表している。さらに、人民元建て中国国債を国外では初めてロンドンで起債する。RMBトレーディングの拠点をロンドンに置き、発展させようとしている。これは、AIIBと同期して中国が中東から欧州、そしてアフリカへの影響力を強化する しかし、これでは、出血をしながら輸血しているようなものだ。中国の通貨・金融政策は国家戦略の柱であり、その動向からは目が離せない。
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/85fcec6e-765b-11e5-a95a-27d368e1ddf7.html#axzz3p4Nolq2S
海外投機筋は11月に日本株とともに去って行く
転じて日本では、11月4日にゆうちょ・かんぽの第一回目の上場が予定されている。1998年のNTTドコモ以来の大型上場である。海外のヘッジファンドにとっても、日本株で儲けを出す今年最後の狩場となるだろう。その後、マーケットはクリスマスにかけて荒れるだろうから、企業の財務担当者は、輸入材については当面、当用買いにすべきだろう。
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