グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

世界経済の先行きに対する10の警告。下げ相場に備えるとき

マーケットは、来週のFRBによる利上げを織り込んでいるが、じっさい来年の見通しはどうなのか。原油価格の先行きをみても、世界景気全体のスローダウンは明らかである。CNBCニュースは、世界経済の先行きに対して、10の警告を発している。

10 warning signs for investors in 2016
http://www.cnbc.com/2015/12/07/10-warning-signs-for-investors-in-2016-commentary.html

 内容をまとめると以下のようである。

第1に、世界のコモディティの需要を示すバルチック海運指数が1985年以来の低い水準になっている。この指数は、中国の鉄鉱石輸入など原料輸送需要の高まりで2008年5月に過去最高の11793を記録し、リーマンショック後、同年12月に663まで下げた。

第2に、コモディティ市場のインデックス、CRB指数も2009年を下回っている。エネルギー・アナリストとして著名なダニエル・ヤーギン氏も「石油の時代は終わった」と語る。

第3に、マクロ指標においても、今年第三四半期の名目GDPの伸び率は2.7%と、FRBが利上げを実施する名目GDP伸び率が通常5−7%なのに比べれば、経済は脆弱な状態にある。以前FRBが利上げを決定した2004年第二四半期の名目成長率は6.6%だった。

第4に、製造業全般についても、売上は減少し、在庫の積上げがリセッションのレベルに近づいている。

第5に、金融市場では、米国債2年物と10年物のスプレッドが縮小している。銀行は短期で借入れ、長期で融資をし、その利ざやで稼ぐのだが、スプレッド縮小で銀行の収益は圧迫される。今後、FRBの利上げから短期金利が上昇し、イールドカーブがフラットになりそうだ。銀行の収益圧迫が、企業の資金調達面に暗い影を落とすことになる。

第6に、第3四半期のS&P500企業の経営実態をGPPA(米国会計基準)で見直すと、その収益力は14%も落ち込んでいる。キャッシュフローベースの評価(non-GAAP)でみれば1%のマイナスで、株価は経営実体よりも割高になっていると言える。

第7に、国内製造業に関しては、ドル高のせいで米国の輸出は思ったように伸びていない。大手多国籍企業にはドル高のメリットもあったが、ここまで世界景気全体が冷え込んでくると、収益の機会は減少してくる。

第8に、ISM指数がこの5ヶ月下げ続けるなど、製造業に関する指数、PMI等も下げを示している。

第9に、信用リスクの最も低い財務省短期証券(Tビル)と社債のスプレッドが拡がりつつあり、2012年の欧州危機以来の拡大幅となっている。多くの投資家は、危機に備え、安全資産に逃避している様子が伺える。

最後に、株価(S&P500指数)も歴史的な割高となっている。GDPに対する株式時価評価額が120%と、2007年のピーク時よりもさらに10%も高くなっている。また、株価収益率(PER)が19倍となっており、長期的な平均値15倍を大きく上回っている。

総じて、金融市場はリーマンショック手前の割高な状態と同じ環境にある。いつピークから下り落ちてもおかしくはない。
 
こうした相場環境に素早く対応しているのが、ヘッジファンドである。少数精鋭の彼らは投資決定が素早いので、変化に対して刻々とポジションをダイナミックに変えて行くことができる。株式ロング・ショートのマネジャーは、すでにショートポジションを積み上げているし、ディストレスト・マネジャーは破たん証券の買いの準備に入っている。マネジャーの腕前が試されるときである。

個人投資家はくれぐれも信用取引などしないよう、リスクを最小化すべきであろう。企業は、原材料の仕入れは当面買い。今後は為替も振れ幅が大きく、ムリな取引は要注意だ。

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