マーケットは、FRBの2%インフレ目標が達成され、量的緩和縮小(テーパリング)は年内に終了すると織り込んでいます。そして、米国の本格的な金利上昇は来年後半と見ています。しかしながら、先週に引き続き、ウクライナと南シナ海では緊張が高まり、事態はしばらく流動的です。こうした地政学リスクをどう受けとめ、プライシングするかについて、マーケットの動きはまちまちです。
新興市場BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、昨年5月のバーナンキFRB議長のテーパリング発言以降、一斉に下げました。このところの地政学リスクの受け止め方では、それぞれの国の市場では差が見られます。この1週間ほどのグローバルマネーの流れを見ると、BRICs株式市場に流れ、特にロシア市場は5日から9日までで7.3%も上昇しています。
http://www.nikkei.com/markets/kaigai/weekly.aspx?g=DGXNMSGD1000K_10052014000000
量的緩和(QE)で低金利を嫌気したマネーが高い利回りを求め、短期的な収益を狙い、政治リスクの高いロシア、インドへ流入したようです。その一方で、ベトナム、タイ、香港、マレーシア、シンガポールの株式市場は下げています。これは中国とベトナムの海域をめぐる争いを受け、中国に対する脅威がアジア諸国で高まっているためです。特に、華僑の経済力の強い東南アジアの国々では、今後華僑に対する締め付けが懸念されます。
ロシアや中国の政治的な混乱が拡大し長引くような不測の事態が起これば、米ドル金利が予想よりも早く、急速に上昇するリスクを伴います。多くの市場参加者は、FRBの一挙一動に関心を注ぎます。
市場参加者にとってコントロールできない地政学リスクに、ヘッジファンドやプロの運用者はどう立ち向かうか。過去何度もの金融危機を乗り越えて優れた実績を上げて来た運用者は「コントロールできないことで悩みを深めない」と言います。転換社債アービトラージを戦略とするこの運用者は「非対称的な収益を生むポジションを見出すことは我々のコントロール可能な戦略であり、そこに集中する」と語ります。さらにロン・チャーナウ(金融史家)の以下のような言葉を引用しています。
“You don’t want too much fear in a market, because people will be blinded to some very good buying opportunities. You don’t want too much complacency because people will be blinded to some risk.”
(市場ではあまりの恐怖に駆られると絶好の投資機会を見逃してしまう。また、自己満足なだけではリスクに気づかない。)
投資運用業もまた、あらゆるビジネスと同様、不測の事態に対して出来るベストの事は限られているものの、究極的には運用者の自己管理能力や判断力といった定質的な要素に左右されることになります。
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