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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

昭和の日とトランプ政権最初の100日

 本日、4/29は昭和天皇の生誕日、「昭和の日」である。偶然にもトランプ大統領就任から100日目となる。日米では時差があるので、28日(日本では29日に当たる)に米国の予算が議会を通過するかどうかを注目している。

 ちょうど、昨日28日に「米韓FTA見直し」の報道があり、5月9日に韓国の大統領選挙を控え、さらに北朝鮮の脅威を踏まえ、米韓関係がどうなるのかと筆者に問い合わせがあった。

 4/28付ロイター記事を見ると、トランプ氏がTHHAD(新型迎撃ミサイル)システム配備の対価10億ドルを韓国に支払いを求めている。トランプ外交には「カネ」のやりとりで測る損得の考え方が強く滲んでいる。逆に分かりやすい。

http://jp.reuters.com/article/usa-south-korea-idJPKBN17U0AY

 メキシコとの国境に壁を作るにあたり、建設費をメキシコ政府に要求するのと同じパターンに見える。さらに、トランプ氏はNAFTA(カナダとメキシコとの自由貿易協定)を再交渉した後で米韓FTAの見直しを要求している。

 さて、25日には朝鮮人民軍創設85年を迎えた。同日、原子力潜水艦ミシガンが釜山に入港し、原子力空母カール・ビンソンも月末にかけて朝鮮半島近海にたどり着く。トランプの瀬戸際外交は、5月初めに一触即発の大変な緊張をもたらす。

 4/14付の本コラム「グッド・フライデー or バッド・フライデー」で記した通り、筆者はこのタイミングで有事になれば、「デット・シーリング」(公的債務上限)問題が棚上げになると指摘した。折しも、昭和の日の今朝、北朝鮮が弾道ミサイルを発射し、緊張が高まっている。

 日本の立ち位置はどうなるか?仮に南北朝鮮が統一されれば、核を持った強力な新国家が誕生することになり、日本も核武装の方向に動くと国際社会は見ている。しかし、米国外交の重鎮キッシンジャー博士は「ビンのふた理論」(注)に基づき、このシナリオは米中にとって最も望ましくないと考えている。米中はこの共通の利益に基づき、米国が中国を「為替操作国家」として非難しないことにしている。

(注)周恩来に対してキッシンジャーが語った日米関係の位置付け(「ビンのふた」)について

「もしわれわれが[日本から]撤退するとなると、原子力の平和利用計画によって日本は十分なプルトニウムを保有していますから、われわれの撤退にとってかわるのは、決して望ましくない日本の核計画なのであり、われわれはそれに反対なのです。」「日本が大規模な再軍備に乗り出すのであれば、中国とアメリカの伝統的な関係[第二次大戦時の同盟関係]が復活するでしょう(略)。ようするに、われわれは日本の軍備を日本の主要四島防衛に押しとどめることに最善をつくすつもりです。しかし、もしそれに失敗すれば、他の国とともに日本の力の膨張を阻止するでしょう」。

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