地政学リスクは2018年秋口まで続く
前回のリポートからほぼ1ヶ月が経った。その間、9月15日には北朝鮮のミサイルが北海道を通過する事態があり、地政学リスクの高まりから相場にも緊張が走った。この時にはリスクオンからオフへの巻き戻しが瞬時に起こり、円ドルが110-107円で大きく動いた。しかし、危機が去ると相場はまたオフからオンへと転換し、何事もなかったかのように、米国株も上昇し、NYダウ平均株価は15日に最高値をつけた。
短期的には相場には瞬時の円やユーロのキャリートレード巻き返しが繰り返される。緊迫した朝鮮情勢を見るには、ロシアの動きがキーである。ユーラシアで富国強兵を目指すロシアにとって、朝鮮半島、中国、日本、米国が互いに争い、国力を落とすことが望ましい。そのために北朝鮮を挟んで、米露間ではロシアへの経済制裁を巡り、どの様な交渉が行われるか。
そして、米国内では今後「ロシアゲート」が表面化してくる兆しがある(FT紙9/15付 “Trump and Russia: What does Robert Mueller know?”)。トランプは弾劾されるか、瀬戸際外交から軍事行動に転じるか? 2018年11月の中間選挙までにはだいぶ見えてくるだろう。しかし、今からそれまでにはいくつかのヤマがある。
リスクのタイミングとしては、第1に、10月の中国「19大」(第19回中国共産党大会)から2018年2月平壌冬季オリンピックまで。第2に、冬季オリンピック開催後から3月に開催される全人代を終えて、今年と同じように臨戦態勢と軍事的緊張が来年4-6月に繰り返される場合。
地政学リスクの高まりが意味するものは何か? 平たく言えば、世界の利権の仕切り直し・資源の再分配である。利権にはエネルギー資源のほか、通貨発行権や為替レートへの影響力など金融市場に関わる権益・影響力が含まれる。利権の仕切り直しによって、参加者(メンバー)の交替や各自への配分に変化が生じる。参加国は国益のために今からしのぎを削る外交交渉に入っている。英米の動き、ロシア、中国の動きから、2018年年末には「戦後レジーム終焉後の世界」がうっすらと見えてくるだろう。
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