市場の風向きが変わるとき

公開日: : 大井リポート | 

このところ世界で「トランプ現象」が渦巻いている。米国大統領選では、ドナルド・トランプ対ヒラリー・クリントンの対決となりそうだ。米国人は根っから楽観的で新し物好きなのか、あるいは米国はチャンスの国なのか、「これまでの政治家の誰とも異なる」点を誇るトランプ氏に「一期くらい大統領をやらせてみたらどうか」という空気が動き始めている。

 フィリピンではトランプばりに過激な発言で注目を集めたデュテル氏が大統領となる。氏はミンダナオ島出身で汚職・麻薬撲滅を訴え、大衆の支持を取り付けた。また、ロンドン市ではパキスタン系移民のカーン氏が分断ではなく融合を訴え、イスラム教徒初の市長に選ばれた。人権派弁護士のカーン氏は父親が元バス運転手と貧しい階層の出身である。デュテルテ氏とカーン氏ともに、既存のエリート層には属さない、苦労して自分の力で現在の地位を築いた人物で、トランプ氏と共通している。

 一方、世界情勢をみると融和どころか分断へと揺れ動いている。欧州では移民・難民問題の解決の糸口はなく、英国はEU離脱に向けて動き出している。さらに、ギリシャやスペインでは財政赤字が再び逼迫し、労働者や年金生活者は生活不安に怯え、政治経済の不安定化が進みそうだ。

 北朝鮮では金正恩第1書記は9日、朝鮮労働党の党委員長に就任し、核攻撃も辞さない態度で緊張を高めている。また、中国では習近平首席の個人崇拝が盛んになるにつれ自由な言論活動が抑圧されるなど、第二の文化大革命の予兆がみてとれる。

 中南米では、原油に依存するベネズエラは国家破たん状態であり、プエルトリコでもデフォルト懸念が高まっている。オリンピック開催間近のブラジルでは大統領弾劾が始まり、政治情勢が混沌としている。そして、パナマ文書が公開され、独裁政治体制下の権力者や一部の大資本家にいかに多くの富が集中しているのかが白日の下にさらされた。貧富の格差拡大は世界同時多発的な問題となっている。

 翻って日本は、伊勢志摩サミット開催に向けて議長国としての面目を果たすべく、麻生大臣の為替介入発言と年金基金の株式買い支えで、円安・株高の小康状態を保ちたいところだ。しかし、日本の介入は国際金融市場にとっては一滴の水滴が大海に落ちるがごとく、その効果はわずかで短期間である。国際情勢が大きく揺れ動くなか、すぐに大波に掻き消されてしまう。

 オバマ大統領が広島へ足を運んでくれるその対価として米国に差し出すものは何か。サミット後の7月参院選までに、消費税増税先送りと日銀のマイナス金利の深化がポイントとなりそうだ。

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