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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

政治があらゆる領域を支配するパラダイムへ

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 3月に入ってから国際情勢が動いている。3月1日にプーチン大統領が年次教書を発表し、最新鋭核兵器を誇示し、「強いロシア」を内外に示した。そして、2日にはトランプ大統領が保護主義を強め、鉄鋼とアルミに対する輸入関税を打ち出した。週明け5日に中国では全人代が始まり、習近平氏への権力一極集中が進む。中露は独裁主義に邁進している。

 また、週明け、共和党ライアン下院議長がトランプ氏の「貿易戦争」発言に懸念を表明し、保護主義政策が実現しない可能性もあることから、マーケットは安堵して株価もやや反転した。そして、6日には韓国から北朝鮮へ特使が派遣され、南北関係及び米朝関係に転機が訪れたのかどうか。

 世界はパラダイムシフトしている。リーマンショック以降、国家権力が中央銀行を通して金融政策に介入し、いわば「国家金融資本主義」がニューノーマルとなった。加えて、中露の独裁主義強化に加え、欧州の社会でもポピュリズムが台頭している。政治=国家権力が、経済や金融、株価にまで影響を及ぼす。こうした統制経済体制は独裁主義にとって好都合だが、中長期の成長を妨げるだろう。

 パラダイムシフトを明確にしたのが、トランプ氏の「アメリカ第1主義」だ。不景気でもないのに何故、大型減税やインフラ投資といった大盤振る舞いが必要なのかと首を傾げるエコノミストも多い。トランプ氏は経済合理性を追求していない。多国籍企業を米国に引き戻し、国内での雇用拡大を図り、ラストベルト地帯の有権者を支持基盤に二期目を狙う。彼の政治目的が経済や金融、軍事などあらゆる領域の上位に立ち、政治がその他の領域を人質にとったようなものだ。これまでの常識が通じない世界が広がりつつある。

 中国では「デジタル・ファシズム」と言われる第二の文化大革命が始まっている。貧富の格差が拡大し、我々市民は分断され、やがて独裁政権に自由や魂までも奪われてしまうのか。ある日気づくと、世の中がとんでもないことになっている、異次元の社会が広がっていたということにもなりかねない。

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