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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

Rexitの後に来るもの

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 今週はティラーソン国務長官解任のニュースで、北朝鮮やイランを含む地政学リスクが注目される。ニュースでは、彼のファーストネームRexから、「Rexit」と報じられている。メイ首相は英国EU離脱「Brexit」後の後始末に苦戦している。Rexit後の米国はどうなるのか?

 米国の国家情報機関は米国の脅威に関する年報”Worldwide Threat Assessment” (2/13/2018)にて以下のように言及している。主な脅威として、

1) 北朝鮮とイランの核問題
2) 11月の中間選挙に向けてのロシアによるサイバー攻撃
3) 技術移転のおかげで中国人民解放軍の近代化が進む
4) 膨れ上がる米国債務

 あくまでも外交政策による和平を求めたティラーソン氏が解任された後、トランプ大統領はタカ派のCIA長官ポンペオ氏を起用した。上の1)から3)に関しては強気に立ち向かう姿勢である。

 トランプ大統領は米朝直接会談を歓迎し、当地まで出向くという意思表示をしたことで、「これ以上有りえない譲歩」を見せた。もはや北朝鮮側には選択肢はなく、会談を実施し、非核化に合意し実行しなければならない。さもないと米国は軍事的解決策に出るだろう。

 ところで、国家情報機関が公的債務問題に言及するのは「経済安全保障上」の懸念があるためだ。米国の公的債務は20兆ドル(約2000兆円)に達し、増え続けている。米国債の買い手は海外の機関投資家であり、主要な保有国は中国と日本である。また、債務が増え続ければ債務返済コストが上昇し、経済成長の重荷になる。

 こうした深刻な状況にもかかわらず、コーン委員長辞任の後空席になっていた国家経済会議(NEC)の委員長に、トランプ大統領は人気マーケットコメンテーターのラリー・カドロー氏を抜擢した。カドロー氏はTVタレントであり、ついに会議がTVショーになってしまった。これはさすがに正気の沙汰とは思えない。

 ところで、Rexit後にやって来る脅威をまとも受けるのが日本である。米朝対話が実現すれば、「北朝鮮に最大限の圧力をかける」と吠えていた安倍政権は蚊帳の外に置かれる。米国の保護主義政策のあおりで円高となれば、アベノミクスを支えてきた円安・株高は持続しない。森友学園問題はまだ長引きそうだし、万一、安倍麻生退陣となれば、株価は大幅下落し、本当の国難がやって来る。

ヘッジファンドニュースレター

ソース ブルームバーグ “Bond Market’s Most Feared Traders Threaten Treasuries Once Again”(3/14/2018) Statement for the Record: Worldwide Threat Assessment of the US Intelligence Community

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