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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

乱高下する相場、再び調整局面へ、利上げ、公的債務、CA、保護主義、そして、米朝関係

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 FRBは市場の予想通り、0.25%の利上げに踏み切った。そして、23日には再び「デットシーリング(公的債務上限問題)」の期限がやってくる。米国の財政は「つなぎ法案」でなんとか債務問題を先送りしている状態である。

 この先、トランプ大統領の大減税とインフラ投資といった大盤振る舞いで債務は膨らむ一方で、加えて、金利は上がる。常識的に考えて、今後、債務負担が重くのしかかり、成長を阻害する可能性も高まってくる。企業金融にとっても、インフレ懸念よりも先に資金調達コストが跳ね上がるのではと懸念される。公的債務問題先送りは、金利や相場に暗い影を落としている。

 そして、22日にはトランプ大統領は中国を標的にした関税措置の覚書に署名した。「米中貿易戦争」が本格化する。保護主義の権化「301条」をテコに、知的所有権と技術移転に関し、中国への制裁措置を進める。中国もまた米国への対抗措置をとることから、世界経済を支える大国同士の貿易戦争を懸念し、マーケットは大きく下げ始めている。相場は再び調整局面に向かう。

 加えて、ロシア疑惑問題で捜査に進展が見られる。ついに「ケンブリッジ・アナリティカ」(CA)社への捜査が深まった。CA社は2016年の米大統領選挙でトランプ陣営のためにビッグデータ分析を駆使し、世論を操作し、選挙戦を勝利に導いたと言われている。このビッグデータ収集のために、CA社が米国のフェイスブックユーザー約5千万人の個人情報に不正アクセスしたと報じられている。

 実は、筆者は「トランプ政権を支える新たな軍産複合体 2017/7/31」(https://globalstream-news.com/post-30617/)で、早くからCA社の役割に言及してきた。今後、同社や新たな軍産複合体の深層が少しずつ明るみに出てくるかもしれない。

 トランプ大統領が11月の中間選挙で勝利し、さらに二期目を目指すには、米朝会談を成功させてノーベル平和賞にも匹敵する功績を上げ、ロシア疑惑を晴らす必要がある。そうした世論形成には、CA社のような戦略マシーンが不可欠なのだ。トランプ大統領の思い通りに全てうまくいくとは限らないだろう。

 米株式相場にはこうした重しが下げ圧力となりそうだ。

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