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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

トランプ政権を支える新たな軍産複合体

 トランプの「ロシアゲート」をめぐり、ホワイトハウス、米議会、メディアが大きな不信の渦に巻き込まれている。部下同士を戦わせるというトランプ独自のマネジメントスタイルで、内部が「誰が誰の敵で味方なのか」分からない混沌とした状態となっているようだ。

 そもそも政治に関心のない不動産屋トランプがどのように大統領にのし上がったのか。その裏側には彼を支えてきた新たな軍産複合体の姿がある。

 ファクタ7月号、8月号の連載記事「デモクラシー簒奪(上・下)」によると、ケンブリッジ・アナリティカ(CA)社が米大統領選挙とブレクジットを操縦したことは明らかである。心理戦の軍事技術をマスデータに取り入れ、ビッグデータの集積、データマイニングなどの革新的技術を政治的に利用し、個人を狙い撃ちする「マイクロ・ターゲティング」が効果を発揮している。そして、軍需産業とIT企業(グーグルやFB、ペイパルなど)、クウォンツ系ヘッジファンド創業者といった資本家が手を組み、コングロマリットを形成している。しかも、思想的にはバノン氏のような極右に偏っている(バノン自身も元CA社員)。

 いかにトランプ個人が支離滅裂なことをツイッターで囁き、メディアが毎回それに対して批判を重ねても、その裏側では情報が統制され、独裁的な管理国家体制がすでに築かれている。民主主義政治や資本主義経済といった体制は、幻想になりつつあるのかもしれない。

 もっとも恐ろしいのは価値や文化の破壊である。このままトランプが好き勝手な言動を繰り返し、それに振り回されるホワイトハウスや議会、メディアが市民の信用を失い、分断された米国社会はますます混迷を深め、アノミー(社会規範が崩壊する)状態となるだろう。米国の中間層の根源的な価値(勤勉、正直さなど)や信仰心が失われるのではないかと懸念される。

 日本と同盟関係にある米国は、国内が大きく揺れ動いている。トランプも日本側も1980年代で思考が止まっているようだが、かつての米国とは時代が異なっている。北朝鮮の攻撃に備えてハワイ州では危機対応に準備を重ねている。日本は家計学園どころではないだろう。contingency planを持たない国家は滅び、それすら国民のために提供できない政治家は不要である。

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