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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

経済安全保障と地政学リスクがシンクロ

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 春分の日(3月21日)を過ぎる頃から世界情勢が大きく動き出した。金正恩委員長は26日に北京に入り、習近平国家主席と会談したというニュースが28日に伝えられ、その翌日29日に、韓国と北朝鮮との会談が4月27日に開催されることで両国が同意したと発表があった。南北首脳会談は、5月開催予定の米朝会談に向けてのステップであり、北朝鮮が非核化に向けて動き出すかどうかを世界が注視している。

 マーケット・プレーヤーも、こうした地政学リスクが和らいでくれば「リスクオン」のトレーディング・ポジションを取りに行くことになるだろう。しかしながら、先行きにはいくつもの不確定要素があり、相場上昇の重しとなっている。

 一つは経済安全保障の観点から、トランプ大統領による保護主義、「貿易戦争」の姿勢である。米国の保護主義政策のターゲットは中国であり、今回の北朝鮮の北京電撃訪問の裏には、両国の共通の敵である米国をターゲットにしたもう一つの安全保障の取り決めがあったのではないかと想像される。

 もう一つの要素は、ロシアの動向である。ロシアの世界戦略は、シリア、イラン、そして北朝鮮に通じる。折しも、3月4日に英国西部の町ソールズベリーでロシア人元スパイのスクリパリ氏とその娘が神経剤で白昼堂々襲われる事件が起きた。英国政府は13日に、ロシア軍で開発されたこの神経剤が英国国内で殺人に使われたことを重く見て、ロシアの外交官23人を国外追放し、ロシアの国有資産を一部凍結するなどの強い措置を取った。フランス、ドイツも英国に追随し、ロシアへの制裁を強めている。

 EUはウクライナ情勢を巡り、12日にロシアへの制裁を6ヶ月延長したばかりだった。ロシアは2014年にウクライナ南部クリミア半島を編入し、ウクライナ東部に新ロシア武装勢力による支配を進めている。ウクライナはEUへの天然ガス供給経路にあたり、EUは対ロ制裁を続けている。

 そして、26日に米国はロシア外交官ら60人の国外追放とシアトルのロシア領事館閉鎖を命じた。その報復措置として、29日、ロシアは米外交官ら60人を国外追放し、サントペテルスブルクの米国領事館閉鎖を報じた。ロシアの報復措置は英国とEUに対しても強まるだろう。

 マーケットは、経済安全保障、非核化を巡る地政学リスクとシンクロし、リスクオンとオフの間を行き交い、4月から6月にかけては特にボラティリティーが高まるとみられる。

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