グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

先行きは不透明、今こそ、次なるデジタル大革命に備えよ

 8日金曜に、4月の雇用統計など、米国の重要な経済指標が発表された。コロナショックからの8週間で米国の失業者は3300万人に急増。4月の失業率は14.7% と、戦後最悪となった。

 雇用状況についてセクター別に詳しく見ていこう。下の円グラフは、コロナウィルス感染拡大による失業リスクの高さで職種を色分けしている。ロックダウンで真っ先に失職のリスクにさらされたのが、赤く示したセクターで、食料品、リテール、卸売、建設、製造の現場である。

 黄色の専門職とグレーの教育関連は、今のところはオンラインで何とか仕事を続けている。しかし、専門職でも今後は企業のリストラで失業者が増えるだろう。そして、医療従事者をのぞいて、比較的雇用が守られるセクターが青で示される公務員、宅配、金融機関である。

 この先ロックダウンが長引けば、5月の失業率は20%近くに達するだろう。しかも今の時点で、失業保険に申請しても何らかの理由で保険金が払われない人が1400万人近くいるという。このまま市中に失業者が増え続ければ、感染の恐怖に加えて、治安の悪化、社会不安が増幅するという悪循環に陥ってしまう。

 米国もなるべく早くに経済活動を再開し、正常な生活を取り戻し、V字回復を図りたい。しかしながら、ロックダウンをいきなり解除すると、感染拡大の第2波のリスクが高まる。下のグラフはやや悲観的なシナリオも含めて、3通りの可能性を示している。

 コロナウィルス前を起点として、GDPは4月までに急激に落ち込んでいる。

 第1のシナリオでは、ここから緩やかに経済が回復していく「V字型」のベースライン(赤色の基本線)が示される。しかし、これは、やや楽観的すぎるだろう。

 第2のシナリオでは、青の点線で示されるように、ロックダウン解除後の夏場にややリバウンドして、第3四半期以降で感染第2波に見舞われ、もう一度落ち込み、二番底をつく。そして、今年冬から回復に転じ(「W字型」)、21年前半まではスピーディーに回復する。が、その後の回復のペースはノロノロで、2023年を過ぎてもコロナ前には戻らない。

 第3のシナリオは、赤い点線で示される。これから夏場にかけて景気はさらに冷え込み、深く底打ちする。それから、回復に転じる(「深い谷間のV字型」)。そして、21年前半まではスピーディーに回復し、その後はややゆっくりだがか着実に回復し、23年前半までにはコロナ前のベースラインに戻る。

 今から2023年までの3年間で、デフォルト、企業破綻、個人破産が増え、社会にリセッションの暗い面が反映されるだろう。そうした中で企業の淘汰が行われる。生き残る企業はより強い競争力を備え、コロナ後の新しい需要を先取りしていく。投資マネーはすでに先を見据えた成長セクターに流入している。次世代のデジタル・インフラを担う成長力と経営力を備えた企業、例えば、マイクロソフトの株価は上昇している。

 90年代の終わりにIT革命が起こり、産業構造やビジネスのやり方、社内での働き方も大きく変わった。それと同じくらいのマグニチュードでこれから次のデジタル大革命が広範に進行する。変化に対応し、生き残り、次世代に輝けるかどうか。今から数年が正念場である。

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