グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

トランプショーは終わらない

1月30日(日本時間の31日)にトランプ大統領の一般教書演説があった。筆者もBBCのライブでその様子を見た。自画自賛に満ち溢れたショータイムに辟易し、政治までが仮想になったのかと一瞬感じた。

多くの米国人は個人の年金などを株式で運用しているので、株価が堅調で資産価値が増えていく限りは、トランプ氏が暴言を吐こうが直接生活に影響しない限りは、どうでもいいというところなのだろうか。

米国の投資マネーも株価を押し上げている。トランプ大減税の号令で、大手多国籍企業が活動の本拠地を米国に戻し、雇用拡大が見込まれることで、確かに昨年10月後半から投資マネーが米国に還流している。リスクオンに転じたのだ。これは、ヘッジファンドの動きを見るとわかりやすい。

ヘッジファンドは2017年を通してトランプ政権に懐疑的だった。米株のショートポジションを増やし、トランプの政策が泡で終わるリスクをヘッジしていた。しかし、昨年第4四半期にヘッジファンドは猛烈な勢いでショートカバーとロングポジションに切り替えた。米国株と日本株の動きは相関性が高いので、ちょうど昨年10月22日の衆議院選挙と相まって日本株相場も上昇した。

今後ヘッジファンドを含むリスクマネーはどう動くか?トランプ劇場のパフォーマンスによる。もし筋書きを誤れば、すなわち、政策の致命的なミスやトランプ個人の失態などで景気に水をさすとなれば、ヘッジファンドは素早くリスクオフへとポジションを巻き返すだろう。この場合、株価は下落し、トランプ一強への社会不満が吹き出し、あるいはロシアゲートから国内政治が混乱すると行った事態が起こりうる。その時、米国社会の分断がさらに深まるのか、あるいは米国民はもっと別の共通の価値を見出すのか。

一般教書演説を強く批判したケネディ3世民主党議員(1968年に暗殺されたロバート・ケネディの孫)の映像を見た時、筆者は37歳の若い議員が70代のトランプ氏よりも輝かしい存在になる日は近いと感じた。ショータイムはまだまだ続きそうだ。

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