グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

トランプの経済制裁強化、そして米金利上昇

 本日の世界のトップニュースは「Trump Kills the Deal」。欧米6カ国がイランの核開発の大幅な制限を条件に経済解除をした「イラン核合意」から、米国が離脱を表明。2015年から3年続いた平穏な期間が終わった。米朝会談を目前に、「オバマがやったイラン核合意など要らん!」と、トランプ氏は「まやかしではない」完全な非核化を要求する。

 イランと北朝鮮、加えてシリアのバックにはロシアがある。ロシアは北朝鮮へ武器供給の後ろ盾になってきた。イランは2016年に国産原油をフランスやスペインに輸出する際にユーロ決済を実施した。その後、人民元決済も始めた。

 そうした背景があって、このところフランス大統領、ドイツ首相、そして英国外相が次々とワシントンDCを詣で、なんとかイラン核合意から離脱しないようにと、トランプ氏をなだめていた。英国外相は「ノーベル平和賞」を人参のごとくトランプ氏の鼻面にぶら下げて見せた。その裏では、米朝会談が失敗し、米国が軍事攻撃に出ても、欧州は直接米国を支援できませんよと伝えていたようにも見える。

 フランスは長年イランの核開発と関係してきた。ドイツは国内では原発反対だが、フランスから電力を購入している。英国はといえば、シティの有力投資銀行はイランの核開発の資金調達や原油取引に関わってきた。欧州は深くイランとの取引に関わり、また、ロシアからの天然ガスにも頼っている。

 米の合意からの離脱はマーケットに織り込まれていて、イランからの原油産出量が減り、サウジとロシアは減産が見込まれることから、バレル当たり70ドルの原油高が続いている。そんな中、8日にはプーチン大統領の就任式典が華やかに行われ、今後2024年までプーチン皇帝が世界への野心を燃やすことになる。

 このように、ロシアをめぐる欧米間の温度差は、原油決済をめぐる「ドル覇権」の観点からも、米中貿易戦争や中東の地政学リスク、米朝会談の行方を考える必要がある。この会談に向けて、米のイラン合意離脱発表と同時にポンペオ国務長官が2度目の訪朝をしている。その2日前には北朝鮮の指導者が2度目の訪中で習近平氏と大連で会談した。

 核問題で中東、東アジア地域が不安定化する一方、米国が金利上昇に向かう中、米国の裏庭ラテンアメリカ金融市場が不安定化している。米国債10年物の利回りが3%を超え、投資マネーは新興国市場から米国に流入している。アルゼンチンでは中央銀行が政策金利を40%に引き上げ、自国通貨ペソ下落に歯止めをかけようとしている。ベネズエラも経済破綻で原油生産ができず、原油価格上昇の一要因となっている。

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