5月30日にイタリアの政情不安が報じられ、イタリア国債の価格下落と利回り上昇が伝えられた。マーケットは、リスクを取りに行く「リスクオン」から「リスクオフ」へと転じ、株式が売られ、米国債など安全資産が買われた。円高も進み、108円台に乗った。この動きは、31日にはやや落ち着き、ダウ平均株価も300ドル以上値上がりした。
イタリア国内では、ポピュリズムやナショナリズム、ユーロ離脱といった不安要素を抱えている。財政基盤の弱いEU諸国もまた、同じ問題を抱えている。こうした要素はしばらく消えることはないだろう。「経済危機 → IMFやEUによる財政支援 → 緊縮財政 → 国民の不満から政情不安」という悪循環を繰り返すからだ。
IMFなどから一時的な財政支援を受けて、政府はなんとか生き延びるが、国内では緊縮財政で、公共サービスがカットされ、低所得者層や年金暮らしの高齢者など経済的に弱い立場の人たちに一番被害が及ぶ。経済的貧困から、移民問題(移民が公共サービスの利益を受けながら国民の職を奪う)がくすぶり、政治への不満が高まると、ポピュリズムやナショナリズムの政党が選挙で勝利してしまう。
欧州ではこの種の悪循環が、繰り返し起こりそうだ。リーマンショック後にギリシヤ危機や幾つかの危機を乗り越え、現在、イタリアやスペイン、ポルトガルでは、経済の状況も改善している。それなのに、なぜ、金融市場が不安定になり、再び財務基盤の弱い国のソブリン債が売り浴びせになるのか。
原因の一つが「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」という金融商品である。この相対取引では、信用市場で本当に破綻(デフォルト)すると保険金を払わなくてはならない金融機関がある。30日には、こうした取引業者のドイツ銀、コメルツ銀、ミュンヘン再保険の株価が軒並み下落した。
往年のヘッジファンド、ジョージ・ソロス氏はナショナリズムに反対し、「オープンソサイエティ(開かれた社会)財団」を率いて、政治改革を促す市民活動家たちへの資金支援を行なっている。このところのソブリン債市場を見ても、政治と金融が一体化し、危機を増幅させる傾向が強いようだ。
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