米朝会談の後に来るもの
トランプ大統領は「商売人」で、その本音も分かりやすい。米朝会談はリアリティショーとしては今一歩だった。拉致問題を取り上げ「被害者を返せ!」とトランプが怒り、ちゃぶ台をひっくり返すといいなと、筆者は密かに期待していたのだが、彼も北朝鮮の指導者もカネのことしか頭にないようだ。
日本にとって米朝会談の後の課題が山積している。
- 朝鮮戦争が終わり、表向き米軍は韓国と日本から引き上げる。戦後日本の「55年体制」も変化の時か。
- 拉致問題について米国は「口を聞いてやった、あとは自分で解決しろ」と言わんばかり。
- 日本は最悪、北朝鮮の短中距離弾道ミサイルの脅威にさらされながら、北朝鮮の完全で不可逆的非核化と経済発展やインフラ整備のために、何兆円、あるいは長期に何十兆円規模でカネをつぎ込む羽目になるのかもしれない。福島原発の廃炉処理に加え、原発関連の赤字は「兆」単位で増え続けるだろう。
将来増大する財政赤字に呼応するかのように、15日に日銀は金融政策決定会合で大規模な緩和策を維持すると発表した。折しもFRBは今年2度目の利上げを実施した。パウエル議長は今年後半にもう2回の利上げ実施と、明確な「タカ派発言」をした。筆者の見通しどおり「年4回の利上げ」となる。
さて、米国の金利上昇とFRB議長の「タカ派発言」から2、3ヶ月後に新興国通貨に端を発した危機が、過去に2度起こっている。1998年夏のロシア危機、そして、2015年8月の人民元切り下げである。今回の「タカ派発言」も、ドル建ての負債を多く抱える新興国にとっては借金がどんどん増えていく。アルゼンチン、ブラジルやトルコの通貨価値が下がり続け、要注意である。
円については、理論的には日米の金利差からドル高円安の流れである。一方、超低金利で借り入れる円はキャリートレードに利用されている。この「円キャリ」では、市場に不安が高まると、リスク回避でトレーディングの巻き戻しが起こる。借り入れた円を買い戻すため、短期的に円高になる傾向が強い。
目下、円ドルは110円辺りで膠着している。今後、新興国通貨の不安や米中貿易戦争など対中制裁の具体的な内容が出てきて、米の保護貿易主義が強まるにつれ、リスク回避で円高に振れる可能性が高くなるだろう。
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