8月は地政学リスクが高まりそう
7月のFOMCでは予定通り0.25%の利下げが実施された。パウエルFEB議長の発言が予想よりも「ハト派」的でなかったことを嫌気してNY株式相場が連日下げた。
加えて、8月2日に、トランプ大統領は中国に対して「制裁関税第4弾」を打ち出し、9月1日から輸入品3000億ドルに10%の関税を科すと表明した。この表明を受けて、世界の景気後退が懸念され、NY株価と原油価格は下げ、円高が進んだ。
9月1日以降、米国はほぼ全ての中国からの輸入品に関税を科すことになり、加えて、トランプ大統領は関税率を10%から25%に上昇する可能性も示唆している。
東京市場も2日(金)には一時500円以上大きく下げ、106円台の円高に振れた。日本には緊迫する朝鮮半島情勢が影を落としている。
日本は韓国を安全保障上の輸出管理で優遇措置をとる「ホワイト国」から除外する措置を進めている。その最中に、北朝鮮による新型短距離弾道弾ミサイル発射がこの1週間で3回も続く。民族統一を悲願とする韓国文大統領の意図はどこにあるのか。そして、米国が仲介するにしても、日本は相手国の戦略を確実に読めているのか。
気になる点は、まずトランプ大統領が「北朝鮮の短距離ミサイルは脅威ではない」と発言したこと、そして、北朝鮮が日本海に向かって発射したミサイルはロシア製であることだ。
7月23日にロシア軍機が竹島周辺の領空を侵犯したとして韓国軍機が警告射撃を行った。ロシア国防相は中露両軍が日本海と東シナ海の上空で「合同長距離パトロール」を実施したと発表した。ここに中国、ロシア、北朝鮮の軍事的関係が見えてくる。
さらに、8週間続く香港のデモの行方に関して、中国による軍介入が間近と思わせるような動画が公開されている。
中国軍、香港のデモ隊に動画で警告 暴動鎮圧演習を公開https://www.afpbb.com/articles/-/3237985
一つ一つの事象が裏では線で繋がっている。こうした局面において、地政学リスクに対する日本に安全保障上の原則や戦略なければ極めて危険である。
8月の終戦記念日が近づく。21世紀のグローバル時代に、大国を巻き込む戦争が何年も続くとは考え難い。過去の大戦で数年かかったことは今であれば数ヶ月で処理されるだろう。金融市場においても、地政学リスクが本気に高まる中、より短期間にボラティリティーが高まる可能性がある。具体的には急激な円高、ポンド安、資源通貨安など、そして、株価下落、流動性の逼迫からくる信用市場の不安定化といった事態である。
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