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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

台風15号とシーレーン 危機管理が重要

 台風15号が千葉県に上陸し、大きな被害が及んでいる。電気なし、水なし、ネット情報なし・・・ライフラインは絶たれ、孤立して助けを求めることもできない。これでは最悪のケースを想定した危機管理がまるでなっていない、まさに最悪のケースだ。

 14日(土)にサウジアラビアがドローン攻撃を受け、アブカイクが破壊された。サウジアラムコが1日当たり570万バレルの産出量を失ない、原油とガスの生産量が5割減少し、復旧には数週間以上かかる見込みと報じられている。これはIPOを控えたアラムコにとって致命的な打撃である。

 米国はイランを非難し(イランは攻撃を否定している)、英米軍が報復を行う、あるいはサウジとイランの軍事衝突の可能性があり、「ホルムズ海峡波高し」となるリスクは高まる。

 私は5月にシーレーン確保が日本にとっての死活問題であると述べた。(https://globalstream-news.com/20190507/)  日本の危機管理が試される時だ。

 地図を見ると、ホルムズ海峡に加えてもう一つのチョークポイントがある。マラッカ海峡から南シナ海を通る地点である。ここには中国海軍が大規模な軍事基地を建設してきた。香港のデモが4ヶ月も続き、情勢が緊迫している。香港情勢は10月1日に建国70周年を祝う中国、そして来年1月に総統選挙を控えた台湾にも大きな政治圧力を与えている。

【シーレーン地図】 矢印は原油のルートを示している

 日本への原油やアルミニウムなど資源の供給が困難になるとどうなるのか。原油の備蓄があるので価格の急騰はすぐにはないかもしれないが、それでもホルムズ海峡での軍事衝突や問題が長期化すれば、原油価格は上昇する。1970年代のオイルショックとまではいかないかもしれないが、10月の消費税率引き上げに追い討ちをかけるように日本経済にとって大きなマイナスになるだろう。

 サウジは原油生産量で世界第3位である。原油価格の上昇で得をするは米国とロシアである。シーレーンを通らないルートで原油とガスを日本に供給できるのはこの2国で、彼らは大きな「漁夫の利」を得るだろう。

 さて、金融面では地政学リスクの高まりで、円高が進んでいる。また、サウジアラムコのIPOが危ぶまれる中、ソフトバンクの行方が気になる。サウジ政府はアラムコのIPOで得た資金を、サウジ経済を原油一辺倒から脱却し、より近代化した産業構造へ発展させるための原資に充て込んでいた。さらに、サウジ政府系ファンドがソフトバンクの1000億ドル(約10兆円)ファンドのうち450億ドルのコミットをしていた。しかし、アラムコIPOが不発になると、このコミットメントは実現しないだろう。

 このところソフトバンクはWeWorkのIPOも不発になる可能性が高まり、資金繰りで苦境に立たされている。サウジのカネの切れ目がソフトバンクの生命線(シーレーン)の切れ目になるかもしれない。

 そして、今週予定されているFOMCの利下げも確実で、主要中央銀行は一層の利下げに動くとみられる。

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