グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

金融と地政学リスクがシンクロ、その先に見えてくる近未来とは

10月に高まる地政学リスク

10月に入ってからシリア、トルコ、カシミール地方、中東、ウクライナ、香港、北朝鮮など、世界で同時多発的に不穏な動きが起こっている。

10月2日に北朝鮮が潜水艦から弾道ミサイルを発射し、日本の排他的経済水域に達した。 10月7日には突然、米軍がシリアにおけるISとの戦闘を終了したし、シリア北東部から撤退を始めた。10月8日にトランプ大統領がエルドアン大統領と電話で話し、9日にトルコ軍がシリアへ侵攻し、クルド武装勢力へ攻撃を開始した。

ちょうど同じ10月7日に、FRBが毎月600億ドルの短期国債を購入すると報じた。ニューヨーク連銀がこのオペレーションを2020年第2四半期の終わりまで続ける。これは、9月半ばに起こったレポ市場で翌日物の金利の急騰に対処した措置の続行であり、近い将来、短期市場でキャッシュが逼迫する非常事態に備えたものと思われる。

これほどまでFRBのバランスシートを膨らます非常事態とは何か?シリア・トルコ情勢の混迷や、10月11日にイラン籍タンカーが紅海で攻撃を受け炎上したことなど、不穏な中東情勢からも地政学リスクの高まりと米中対立の長期化がFRBに影響を及ぼしている。そうであれば、我々は2020年6月末までは地政学リスクへの警戒を怠るべきではない。

破綻国家続出、その先にあるもの・・・

シリアでは2011年から内戦が続き、国民の多くが難民として海外に流出し、国家は破滅状態だ。ここにきてトルコがシリアに侵攻し、トランプ大統領は「トルコへの経済制裁」を発表した。

多くの紛争地で米露の代理戦争が繰り広げられているが、このままいくと、トルコ経済の先行きが懸念されることに加え、トルコが他のNATO同盟国を巻き添えにする警戒感が高まっている。NATO同盟国であるトルコが攻撃を受ければ、他の同盟国も戦闘に参加し、シリア情勢はさらに混迷を深めることになる。しかも、今以上にシリア難民が欧州の都市に押し寄せれば、NATO同盟国の国内政治が急速に極右化するだろう。古き良きヨーロッパ市民社会は断崖から転げ落ちる寸前なのだ。

このままでは、近い将来多くの破綻国家が続出する。シリアに加えてベネズエラも破綻状態だし、その隣国、エクアドルにも破綻の危機が迫っている。次はアフリカや欧州、中東地域で不安定化が起こるだろう。

そして、トルコも含め、もともと民主的な国家ですら、独裁的な指導者が目立つようになった。彼らは内閣を自分の言いなりになる側近で固め、異なる意見を持つ者をことごとく抑圧し排除する。プロパガンダで国民を扇動し、フェイクニュースを作り上げて、世論操作を行う。

中国のように共産党一党独裁の国家では、情報統制は徹底され、人民解放軍のような共産党の軍隊が国民生活の隅々にまで睨みを利かす。

欧米でも市民社会は分断され、差別がはびこり、危機的な状況に陥りつつある。あの英国ですら、Brexitを契機にEU市民が英国人から差別を受けていると言う。私はこの襲撃的なニュースを聞いて暗澹たる気持ちとなった。

ここ数十年で、景気が悪化し、株式相場が荒れるたびに、中間層が没落していった。やがて社会は、富の大半を所有する1%と無産階級の99%に両極分解する。そして、その上に中央集権的な国家機関が一人一人の言動を監視し、デジタル・ファシズムが進行するだろう。

国民はAIで心の奥底まで監視され、良心の自由も消され、オーウェルの空想小説『1984年』が実現するだろう。いつ私たちも香港人やウィルグ人と同じ立場に立たされるのか?金融と地政学リスクの高まる先に、「明日の我が身」が見えてくる。

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