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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

【奥山真司×大井幸子 前半】苦境に陥る中国/地政学・歴史の観点から見て中国は近い将来アメリカに敗北する!?

 Youtubeで対談した奥山真司さんとの動画の内容を前半・後半に2回連載でご紹介します。テーマは「近未来を予測する」です。この記事は前半です。後半記事はこちらです。


奥山真司(おくやま・まさし)さんのプロフィール

 戦略研究家。国際地政学研究所上級研究員。戦略研究学会理事・企画委員。日本クラウゼヴィッツ学会理事、副会長代理。

カナダのブリティッシュコロンビア大学に入学、地理学科および哲学科を卒業。英国レディング大学大学院戦略学科で修士号及び博士号(2011年)を取得。コリン・グレイに師事した。日本の地政学や戦略学の最新の知見を紹介し続けている。


 私(大井幸子)は国際金融が専門分野ですが、近未来の金融を予測するにあたり、地政学は切っても切り離せないと考えています。国際政治、安全保障、地政学と国際経済・金融は密接に関係しているからです。

 対談は2回に分かれていますが、初回の今回は、地政学の専門家である奥山さんに、地政学の視点でランドパワーとシーパワーの戦い、チョーク・ポイントについてなど、これまでの世界の流れについて解説いただきました。

地政学の基本とは

奥山:地政学では非常に大きなところから物を見ます。世界を真に支配している人がいるとすると、その人たちがいかに世界を管理していこうかって考えるひとつのアプローチです。学問ではないんですけどそういう視点を昔、持っていた人たちがいてその人達の見方を教えてくれます。

 国際政治の一つの切り方を教えてくれるというものだと理解していただきやすいかなと思います。

中国について

大井:地政学ではいろんな力学があると思うのですが、地政学的に考えると、中国をどんな風に考えることができますか?

奥山:地政学というのは、19世紀から20世紀初頭に登場したものの見方です。大きな基本的な見方として、海の勢力と陸の勢力がずっと歴史上の争いをしてきたのが世界政治の歴史だという風に見ます。

 大きく見ると陸対海っていうところがまず大前提。そこからじゃあ今、世界地図でこう展開してみると、陸の勢力であるところの中国がいる。それに対してアメリカが海の勢力としています。アメリカってすごく大きいところですけど、実はその活動は世界政治においては海の勢力、島国として 動いている。

 アメリカと中国が対立してこれから世界覇権をめぐる頂上決戦が行われるのかなと考えています。

大井:アメリカはシーパワーで中国はランドパワー、この対立なんですね。どっちが強いのでしょうか?

奥山:基本的な見方としたらシーパワーであるアメリカが圧倒的に強いです。

 なぜかというと、海運から始まったところの金融を押さえていたり、同盟国の数が圧倒的にアメリカの方が多かったりします。アメリカは味方が非常に多いです。

 中国は確かに、アフリカとか東南アジアにお金で買った友達がいますけど、実は本当に友達がいるかというと、自分だけが世界の中心だいうと意識を持ってしまっている。

 一番心配なのは中国自身が「もう俺たち自分一人だけでやっていけるよ」っていう傲慢な状態になって思いあがってしまっている。怖い状況だなと思います。

大井:シーパワーだと外にでていって貿易する、貿易すればお金も使う、自由貿易主義の傾向がありますね。中国は、経済発展はしているけど、ランドパワーはシーパワーにかなわないのでしょうか?

奥山:中国は実はアメリカの海運システムに乗っかっている。陸の勢力であるにも関わらず、海の勢力の貿易システムと金融システムに乗っかって今すごく国力を上げています。

 それを今、中国自身が陸の勢力であることを忘れて、とにかく俺達も全部囲んでいけばなんとかアメリカに対抗できるんじゃないかっていう風に考えている。ですので、おそらくこれでアメリカも警戒して、ぶつかるんじゃないかと思います。

大井:それで中国が南シナ海や台湾海峡に軍事進出して、限定戦争が起こってもおかしくないくらい緊張している。

 地政学的にいうと、ランドパワーが膨張すると、シーパワーの連合軍みたいなのに囲まれて、元に戻るのですね。

繰り返される歴史「19世紀から20世紀初めにかけてのドイツ」

奥山:ドイツは当時、シーパワーの雄であるところイギリスに対抗しようとして、いっぱい海軍を作りました。それに対してシーパワー側のイギリスは外交を駆使してドイツを孤立させました。

 隣のフランスとはすごく領土争いしていたのに、領土は全部売り渡しますよとフランスに擦り寄りました。ロシアはちょっと人権とか帝国とかやばい奴らだけどとりあえず手組んじゃえと。アメリカも引き込んでとにかくドイツを孤立させようとした。

 その結果、世界大戦が起こったんですけど、最終的に勝ったのはイギリス(海の勢力)です。

 このように外交的に孤立させるって言うことを必ずやる。中国はドイツの歴史は分かっているので、アフリカとか東南アジアとか色んなとこに友達を作ろうと思ってるんですけど全然できない。

 今、逆にオーストラリアがすごく対抗してきてドンぱち始めるんじゃないかぐらいの勢いで外交的に対立しています。

 陸側が無理に外に出ようとすると、海側が手を組んで色んな所に手をまわして潰しにかかるっていうのが歴史の法則的に見えます。

大井:ドイツの膨張は第2次世界大戦で抑えられた訳ですね。今度は中国が一帯一路を掲げて膨張している。それが今、限界まで膨らんできている。この後はどうなるのでしょうか?

奥山:ドイツのようになりたくないし経済的に外部に根を張って、中国に味方してくれる国を中国人は作ろうと思っているんですけど、そのやり方が非常にまずい。

 戦狼外交を激しくやっているが、国内向けにすごくウケのいいメッセージを言ってしまうがために、外にどんどん自動的に敵が作られているのが現状です。

 このように外交的にうまくない中国がシーパワーに囲まれて潰されないように立ち回れるかと言うと、僕はそうとう厳しいのかなって思います。

チョーク・ポイント

世界の主要なチョークポイント

奥山:地政学って先ほど上から目線だという話をしました。

 地政学が出てきたのは1900年初め頃の日露戦争前後です。イギリス人が、イギリスが世界でずっとナンバーワンでい続けるためにはどうしたらいいかってことを必死に考えて、地図をいろいろ出している。

 そんな流れの中でアメリカ人の「アルフレッド・マハン」という人も、アメリカという国が世界でずっとナンバーワンでい続けるためにはどうしたらいいかと考えた。その時に出てきたアイデアがチョーク・ポイントだった。

 歴史的にいろいろな国がやっていたんですが、通り道である海峡などの重要拠点を押さえてしまえば、コントロールできる。

 世界全土を支配する必要はなくて、ポイントだけ抑えておけば世界は俺のものという考え方です。

 地図には、そのチョーク・ポイントをまとめてあります。

大井:前半は世界の秩序はどう変わるかを中心にシーパワー・ランドパワーのお話をお聞きしました。また、最後にチョークポイントのご指摘をいただきましたが、後編ではチョークポイントにマネーの流れを重ねて対談したいと思います。地政学に合わせて、お金の流れを読み解きながら、近未来を予測していきたいと思います。

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