昨年からのパンデミックとロックダウンで、家にこもる時間が長くなり、日頃の生活を見直すきっかけになったという人が多いようです。
家で過ごす時間を快適にするために、断捨離する、リノベーションする、あるいはより良い環境に引っ越しするなど、実際に行動した方も多いと思います。
米国ではそうした動きがよりダイナミックに現れています。例えば、私も20年近く暮らしたマンハッタンでは、多くの人々が郊外に脱出しました。特に子供のいる世帯は感染拡大から逃れるために安全な地域へ移住しました。また、金融機関で働く多くの人々はテレワークに慣れ、どうせ家で働くならば狭いアパートから出てより快適な郊外の広い家へ引っ越ししました。
こうした流れはビジネス街の移動にも見て取れます。マンハッタンの投資銀行ゴールドマンサックス社やヘッジファンド「ポイント72」は、オフィスをフロリダのウェストパームビーチに移しています。この辺りは、ニューイングランドの寒い冬から逃れてくる人や退職者コミュニティといったまったりした地域なのですが、このところニューヨークの不動産業者が乗り込んで来て、活気あるビジネス街へと変わりつつあるようです。
参考記事:Wall Street’s Palm Beach Foray Fuels Developer Rush for Offices(BNNブルームバーグ 6月7日付)
マンハッタンでビジネスが減り、人口も減ると、ニューヨーク市の赤字財政がさらに逼迫します。米国では税率が上がると犯罪率が上昇します。そうなると悪循環で、街がどんどんさびれていきます。このままではマンハッタンは1970-80年代に戻ってしまうと警戒する人もいます。一方、1年前に閉鎖されたブロードウェイや劇場、レストランが戻って来れば、観光客やビジネスも再びマンハッタンに戻ってくるという楽観的な見方もあります。果たしてどうなるか?
国際的な人の移動について興味深い統計があります。これはAFRAsia Bankのリポートで、2019年の数字です。世界の富裕層(資産100万ドル以上)がどこからどこへ越境して移住したか、そのランキングは以下のようです。
富裕層流入国:1位 オーストラリア、2位 米国、3位 スイス、4位 カナダ、5位 シンガポール
富裕層流出国:1位 中国、2位 インド、3位 ロシア、4位 香港、5位 トルコ
この統計はパンデミック前のものですが、注目したいのは移住の理由で、安全性(犯罪など生命の危険がないかどうか)、ライフスタイル(気候、公害/汚染、自然環境など)、金融事情(銀行システムや信用度など)、教育、ビジネス、税金、公衆衛生、生活水準、政府の抑圧の度合いといった点が挙げられています。
お金を持って移動できる富裕層は「炭鉱のカナリア」かもしれない。こう考えると、「安全と水はタダ」ではない世界の現実が見えてきます。翻って我が日本。これからどうやって身の安全を確保するか。人ごとではないです。
参考資料:AfrAsia Bank Global Wealth Migration Review FULL REPORT
コメントは締め切りました。