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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

インフレは民主主義を破壊する 戦時経済下、インフレは増税と同じ

 先日、チャールズ・マンガー氏の動画「Prepare Now, Huge Inflation is Coming」を見ました。マンガー氏(98歳)はバフェット氏と共にバークシャー・ハサウェイ社を立ち上げ、今日の成功に導いた超有名な投資家です。今もオマハに住み、同社の副会長を務めています。

 (動画のリンク YouTube : Prepare Now, Huge Inflation is Coming

 この動画で、マンガー氏は「インフレは民主主義を破壊する」と明言しています。政府が経済運営に失敗すると、物価上昇、景気後退、失業が起こり、市民生活は困窮し、政府への不満が高まります。そんな時に煽動的なプロパガンダが人々を駆り立て、暴動が頻発したり、社会不安が増幅します。そして、軍部と結託した全体主義的な政権が統治するようになります。その過程では、言論統制など市民的な自由が剥奪され、社会主義や共産主義政権の場合には信仰の自由さえなくなります。このパターンは歴史が示しているとマンガー氏は語ります。

 現在、物不足とインフレが世界に広がってきています。この「コストプッシュ」インフレは、コロナショックとウクライナ危機によって人為的かつ強制的に供給サイドが逼迫したために同時多発的に世界で起こっています。ロックダウンで工場稼働を止める、物流が止まる、人の移動を制限するといった措置が取られ、政府は戦時下のごとく経済活動を統制しています。

 例えば、中国ではゼロコロナ政策で都市が封鎖され、これまでの市場経済は機能しなくなっています。習近平体制下では経済を破壊してもコロナ封じ込めの政治目標が優先されています。

 また、ウクライナ危機では、多くのアジア・アフリカ諸国、アラブ諸国がウクライナの小麦に依存しているため、こうした国々では食糧不足と飢餓が懸念されています。特に貧困国では飢餓と失業で政治不安が一気に高まると予想されています。

 米国では5月3-4日に金融政策決定会議(FOMC)が開かれます。FRBパウエル議長は0.5%の利上げを明言しており、おそらく利上げ実施と同時に量的引き締めを開始するとみられています。

 一方、景気後退(リセッション)リスクが高まっています。とはいえ、リセッションを示す指標は、実際に景気後退に入ったかなり後で正式発表されるので、先行指標として、私はトラック貨物輸送量の減退に注目しています。一般に、景気減速で実質GDPが落ち込む前に、トラック輸送量が減り始めます。ただし、輸送量が減ったからといって必ずしも景気後退になるかというと、そうでないケースもあります。

 グラフでは、オレンジの折れ線が加重貨物鉱工業生産高(2012年を100とする)の推移を示し、縦線は、貨物輸送量の減退期(青)、景気後退期(グレー)、両方が重なる時期(濃青)に色分けしています。

 1990年7月、2001年3月、2007年12月には、貨物輸送量の減退が景気後退に先行しています。この時期はそれぞれ、湾岸戦争、9/11 世界同時多発テロ、リーマンショックによる株価暴落にも先行しています。

 バイデン政権はウクライナに武器を供与し、戦争を長引かせようとしています。その間に、物価上昇と金利上昇が続き、個人消費は徐々に縮こまり、秋口以降にはリセッションが忍び寄るでしょう。バイデンは戦時下の強い大統領を振る舞い、中間選挙を切り抜けようとします。その過程で、ルーズベルト大統領が戦時下の「ニューディール政策」を実施したのと同様に、現政権は5兆ドルもの財政支出を含む統制経済によって社会主義化を目指すと私は予想しています。

 日本もこのままでは、ライフライン(資源、水、食料)の確保において、戦時下の電力制限(計画停電など)や食料配給といった統制経済に向かうリスクがでてきます。岸田政権は石油価格高騰に対して補助金で対処していますが、いずれは大増税の形で我々に跳ね返ってきます。

 我々市民にとって、インフレで物価が上昇するとその分、購買力が削がれ、実質所得が減らされるので、税金を取られるのと同じマイナス効果になります。インフレに増税が重なるとダブルパンチで、生活は本当に困窮し、日本経済は長期にわたり停滞することになるでしょう。

 そして、インフレが進行してくと日銀は金利急騰にどこまで歯止めをかけられるのか?日銀の動向には世界の金融筋が注目しています。膨れ上がる財政赤字と慢性化する経常赤字といった双子の赤字、そして急激な円安に、日銀と財務省がどこまで耐えられるのか?岸田政権の「新しい資本主義」は何を現実認識してのことか?ホンマに思想朦朧です。

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