グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

利上げと弱気市場でロビンフッダーの大敗 「兵どもが夢のあと」

 皆さま、ゴールデンウィーク後半は良いお天気に恵まれていますね。

 米国では年初から4ヶ月連続株価が下げてきました。これまで右肩上がりだった株式相場が「弱気市場」に入ったと言われる所以です。

 4日のFRBの政策決定会議が開かれ、パウエル議長が予定通りの0.5%の利上げを決めました。マーケットは悪いニュースがなかったことで上昇に転じ、3%近く暴騰しました。

 このように、FRBの金融政策は、緩和から引き締めに転換しました。2020年3月にコロナショックがあり、連邦政府は個人に2020年には1200ドル、21年には1400ドルの小切手を送付するなど、生活支給金や支援金で財政支出を増やしました。ロックダウンの当時、多くの若者が思いがけない政府からのキャッシュを手にして自宅で株取引を始めました。手数料ゼロを謳うロビンフッド証券にこうした若者層が数千万人も詰めかけ、ロビンフッダーと呼ばれました。彼らは人気SNSで情報を得て、ターゲットになった銘柄を集中的に買い付け、特定の銘柄が一時的に急騰しました。そうした銘柄はミーム株(流行り株)と呼ばれました。

(注) ロビンフッダーについて、このニュースレターでお伝えしてきました。

 そのロビンフッダーたちは今どうなったか?彼らが値を吊り上げた主要銘柄は暴落しました。例えば、AMCの株価は21年の高値から4分の1に、Gamestopは約3分の1になっています。その他、ロックダウン直後から人気が盛り上がったミーム株、Zillow、Zoom、Pinterest、Netflixも52週の高値から3割以上も下げています。ロビンフッド・マーケッツ社も今年第1四半期の売上は43%減となり、前年のIPO後に最高値を付けたものの、目下の株価はその5分の1にまで落ち込んでいます。弱気市場でロビンフッダーは大敗し、ブームも終わったと言えるでしょう。

 米国でもブームの時にはこうしたロビンフッダー現象が起こります。すぐにリッチになれる!という夢を売るタイプの強気のインフルエンサーがSNSで多くの人を惹きつけます。「こんなに株や仮想通貨で儲かった、なんでやらないの?」とか、「〇〇株爆上げ!豪邸で暮らしている」といったネット上の人気記事を見ると、他人と比べて自分が出遅れているという焦りから、借金をしてまでも流行り株に投資する人が急増しました。こうなると、投資ではなく投機、博打です。

 私は1987年のブラックマンデー以来、弱気相場も経験してきました。マンハッタンで暮らしていた頃、「グランドセントラル駅の靴磨きやバスの運転手が株の話をするのを聞いたら、相場はピークに達した(その後は下げが来る)」とウォール街のプロが話していたのを覚えています。一流のヘッジファンドやその投資家たちは、決して目立つことはせず、信用できる仲間たちのインナーサークルで情報を共有し合い、「たい焼きの頭と尻尾はくれてやれ」と言わんばかり、美味しいところだけをたっぷり味わい、あとは涼しい顔で「金持ちケンカせず」です。

 現在、株式市場は極端な弱気センチメントに支配されています。確かに、今年は悪い材料が重なってきています。私が昨年末のニュースレターの「2022年はどんな年か・・・」の箇所で描いたことが次々と現実になってきています。

 4日の相場上昇は一時的で、今後FRBの利上げが続けば、長期化するウクライナ情勢やサプライチェーンの分断、エネルギー価格の高止まりなどと相まって、世界の経済成長は鈍化、景気後退が近づいています。まだしばらくは弱気市場が続きそうです。ロビンフッダーの復活どころか、「兵どもが夢のあと」と言えそうです。

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