2023年も世界で激変が続く 日本では財政赤字拡大と金利上昇、物価高、増税が続く
2022年も終わりに近づきました。今年は年初から株価が下落し、2月にロシア軍がウクライナ侵攻し、地政学リスクが高まりました。また、3月からはFRBが利上げに踏み切り、インフレも進行しました。世界の主要中央銀行もFRBに追随し、次々と利上げを実施し、金融市場の環境は大きく変わりました。
世界情勢の変動は日本にも大きな影響を与えました。資源価格高騰、物価高、そして急激な円安が、経済を直撃しました。金融市場の変化は日銀の政策にも見直しを迫りました。円ドル相場が150円を超えてきたタイミングで、日銀と財務省は9月と10月の2回にわたって為替介入を実施しました。
さらに、12月20日には「黒田ショック」が起こりました。日銀は長期金利(10年債利回り)の変動幅を±0.25%とし、上限を超えないように国債を購入するなどでコントロールしてきました。しかし、これまでの「イールドカーブ・コントロール」を修正し、変動幅を±0.5%程度に拡大したのです。多くの関係者は黒田総裁が来年4月の任期満了までは政策を変えないだろうと思っていたので、この措置は想定外で、海外でも「黒田ショック」と報じられました。
日銀のニュースを見た私の読者の方が「黒田総裁の顔色がかなり青白いですね」と、感想を寄せてくれました。私も、そこまで円債市場も壊れかけていたのかと、日銀内部の危機感を感じ取りました。ちょうど、当ニュースレター12月11日号で、電力会社の資金調達が不調に終わったという債券市場の冴えない様子をお伝えしたばかりでした。内容を引用しますと・・・
“このところ日本の社債市場では調達コストが上昇しています。ちょうど電力会社ではLNG など燃料費高騰の影響で資金調達に迫られています。関西電力、東北電力に次いで、11月にJERA社は4000億円のハイブリッド債(劣後債)発行を予定していました。実際、12月9日に965億円が発行され調達されました。当初の予定よりも少ない金額しか調達できませんでした。日本の債券市場は軟調で、投資家は円債のリスクを警戒しているのです。”
参考:https://globalstream-news.com/221211/
日銀のイールドカーブ・コントロールのせいで円債の合理的な価格形成ができない、国内の機関投資家も合理的な債券運用ができないので新規発行の債券への投資を控える、よって企業は社債発行による資金調達が進められない、国内のカネが有効に回らない・・・こうした悪循環で、信用市場に危機が迫っていたのだろうと想像します。しかも、政府予算は膨らみ財政赤字は増えるばかりです。実際、長期金利は上限の0.5%に向けて0.4%台に上昇しています。
長期金利が上昇すると、住宅ローンやその他の不動産や消費者関連のローン金利も上昇します。すでに三菱UFJ銀行や三井住友信託銀行など大手では年明け1月に適用する住宅ローン固定金利を引き上げるようです。また、住宅金融支援機構によると、2022年の住宅ローンユーザーの75%が変動金利で借入れており、変動金利も跳ね上がることから、多くの世帯でローンの支払いがじわじわと重荷になってきそうです。
米国では金利上昇で住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードローンといった消費者関連の毎月の利払い額が増え、既に家計に重くのしかかっています。FRBの利上げは9-12ヶ月のタイムラグを持って実体経済に効いてきます。株式相場はそうした状況を半年前から折り込み、既に2022年には下げましたし、これからは株価に追随して不動産セクターでも下落が目立つようになると予想されます。
米国に一周遅れで日本でも年明けからこの傾向が強まりそうです。物価上昇に伴い、賃金上昇がないと、家計はどんどん苦しくなってきます。そんな中でも増税がやってきます。ローン支払額の増加、物価上昇と電力料金など公共料金の値上げ、増税、このトリプルパンチで個人消費を冷え込ませるでしょう。
岸田内閣は海外旅行客のインバウンド消費を増やそうとしていますが、中国の「フルコロナ」は日本にも偏西風に乗ってやってきます。年明け以降から春先まで、私は強い変異株の空気感染に十分注意すべきだと考えています。加えて春節の頃は台湾有事のリスクも高まり、当然、尖閣への侵攻も考えられます。インバウンド推進どころか公衆衛生上・安全保障上の危機に備えるときです。
総じて、2023年引き続き、世界で激動は続きます。日本を取り巻く情勢は、国内の政治経済にとってますます厳しいものになりそうです。
これからも独自の視点から、皆様に有益な国際金融・経済情報をお伝えしていきたいと思います。来年もよろしくお願いいたします!
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