グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

相次ぐ銀行破綻 モラルハザードで、バイデンとイエレンは資本主義を破壊する

次回放送 2/29 20:00〜

 3月10日に米国の地銀、シリコンバレー銀行とシグニチャー銀行が相次いで破綻し、人々が預金を引き出そうと窓口に行列する様子が報じられました。このニュースで見たときに、1997年に山一證券や北海道拓殖銀行が破綻し「取り付け騒ぎ」があったことを思い出しました。その週末に米政府と金融当局は預金者保護の素早い救済策を公表しました。

 そして、15日には大手クレディスイスの経営危機が懸念され、他の主要欧州銀行にも信用不安が広がり、欧州銀行株が全面安となりました。スイス中央銀行は緊急にクレディスイスに対し7兆円規模の融資を発表し、また金融当局はUBSとの合併を視野に入れて動いています。

 スイス当局の対応を見ていると、バブル破綻後の日本の金融危機(1997-98年)と同様、どうしても救済できない銀行は清算し、生き残れる財務体質の銀行同士を合併させて国が資本を注入し国有化し、経営を立て直してから新たに株式を発行して民間経営に戻すといった筋道が見えてきます。

 クレディスイスは米国の地銀とは異なり、「Systemically Important Financial Institution (SIFI): システム上重要な金融機関」に位置付けられます。これは主要国の中央銀行、金融監督当局、財務省及び世銀、IMF、国際決済銀行の代表から成る「Financial Stability Board (FSB):金融安定理事会」が認定するいわば世界のメガバンク集団です。そのリストにはJPモルガンを筆頭にシティ、HSBC、バンク・オブ・アメリカ、ドイツ銀行など、日本のメガバンク3行もSIFIのステイタスがあります。

SIFIのリスト:https://www.fsb.org/wp-content/uploads/P211122.pdf

 こうしたワールドクラスの銀行は巨大な資本力を有し、相互に複雑な金融商品の取引を行います。特に欧州系銀行はドイツ銀行を筆頭にデリバティブ取引が盛んです。そんな中でクレディスイスが破綻すると、リーマンショック並みの金融危機が世界に波及することになります。

 今のところ、欧米の政府、金融当局、中央銀行は銀行が連鎖的に破綻していく危機を食い止めようとしています。そうした中で、米国では「モラルハザード」が拡大しつつあります。イエレン財務長官は、これまでシリコンバレー銀行(加えてシグニチャー銀行)の預金者を100%保護するとしています。通常のルールでは銀行が破綻しても預金者は25万ドルまでしか元本の保証はありません。それ以上の金額分には保証がありません。しかし、今回の措置はFDIC(連邦預金保険公社)とFRBのトップが全額保証を直ちに決めたのです。

 米議会でもこの点について、オクラホマ州のランクフォード上院議員がイエレン財務長官に対して鋭い質問を投げかけています。上院議員「オクラホマ州のすべてのコミュニティバンクに対しても100%預金保証の措置を取るのか」と質問し、イエレンは「それはない」と答えています。

上院でのやり取り:https://www.youtube.com/watch?v=Bcvl104tyRY

 つまり、シリコンバレー銀行救済には政治的「忖度」があるのです。その裏にはシリコンバレー特有の民主党、サンフランシスコ連銀総裁(メアリー・デイリー氏)、ベンチャーキャピタリストやIT長者たちの癒着があります。シリコンバレー銀行は謂わば、こうしたインナーサークル「御用達」の役割がありました。

 シリコンバレー銀行の預金者の多くが当地のベンチャー成功者たちでビリオネアです。加えて中国の富裕層たちの資金も同銀行に預金されています。預金者は数百万ドルもの資金を集中的に同銀行に預け、その代わりに自分達が関わるベンチャーキャピタルファンドや投資先スタートアップ企業に融資をしてもらう、あるいは自身の住宅ローンの手当など特別な関係を持ってきました。彼らは同銀行を通してバイデン政権に多額の献金をしています。さらに、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁は本来であれば同銀行のリスク管理について目を光らせなければならない立場にありながら、バイデン政権が取り組む政治課題、気候変動、BLM(ブラックライブズ・マター)、LGBTQ+権利向上に力を注いでいました。

参考: 3/17付NYポスト記事  https://nypost.com/2023/03/17/why-woke-frisco-fed-chief-missed-silicon-valley-banks-warning-signs/

 一般に、政策金利が上昇し、中央銀行が金融引き締めを行う過程では、信用収縮が起こります。その時には、過度にリスクを取りリスク管理に失敗した銀行では債務超過が露呈し、信用不安が高まります。「取り付け騒ぎ」が起こり、預金者が資金を引き上げていくと、資産を投げ売り、さらに資金不足になるという負の連鎖に陥ります。過去にも同じパターンで繰り返し銀行破綻がありました。それなのに、なぜシリコンバレー銀行は政府から手厚い保護を受けられるのか?しかも、シリコンバレー銀行CEOは、破綻前に自社株を高値で売り抜けています。ここにモラルハザードの根本的な問題があります。

 バイデン政権ではイエレン財務長官を筆頭に、経済・金融システム全体に政治権力の支配を強めようとしています。2008年リーマンショックの時も、大規模な銀行救済はありました。その時はウォール街全体が破綻の危機に晒され、オバマ政権下で大手金融機関には巨額の政府資金が投入され、銀行が破綻してもインサイダーの経営幹部らは多額のボーナスを受け取りました。他方、従業員は職を失い、業界全体の損失は国民の税金で賄われたのです。当時こうした措置がウォール街への「忖度」と批判されました。しかし、これからは特定の銀行や金融機関が忖度の対象となり、さらに露骨なモラルハザードが行われるでしょう。

 金融業界でモラルハザードが横行すると誰も相互に信用できなくなり、信用崩壊が起こり、資本主義は崩壊します。適切なリスクコントロールの上で最適なリターンを目指す行動原則が崩れ、自律的な資本主義の規範が機能しなくなります。挙げ句の果ては「大き過ぎる政府」すなわち社会主義、いやもっと進んで共産主義の独裁政権が、経済・金融の領域を支配することになります。ちょうど中国では習近平が中国共産党トップとして絶対権力を掌握し、これからは自らの権力存続のためだけに国を動かします。まるで北朝鮮の金王朝のように。バイデン政権もその道を辿るのか?

 資本主義の本場、米国では預金者である市民がどこまで信用不安に耐えるかがポイントになると思います。政府はSIFIクラスのメガバンクを破綻させないだろうから、多くの預金者は預金を小さな銀行からメガへと移そうとします。そうなると地域金融が崩壊し、連邦政府すなわち中央集権制が強まり、政府がCBDC(中央銀行デジタル通貨)を使い、国民のお財布に手を突っ込み、国民の経済行動を監視する金融支配を実施するでしょう。まさにオーウェル「1984」実現に向かいます。

 ちょうど10年前に私は『国富倍増 日本国富ファンド:グローバル金融資本主義の政治経済学』(2013年)を出版しました。まさにSIFIのグローバルなメガバンクが金融支配を強める中、国民経済を守るために何をすべきかを著しました。その中で、経済の「屋台骨」である金融には四つのレベルがあると書きました。その概要は以下のようです。

  1. 資本力を有するSIFIクラス、グローバルな金融機関および政府系ファンド、大手ヘッジファンドなど
  2. 国民経済を支える国内のメガバンクや機関投資家
  3. 地域経済を支える地銀、信金信組
  4. 個人の資金需要に対応するマイクロ・ファイナンス

 このうち市民社会にとって重要な金融機関は、地域社会(コミュニティ)にお金を回してくれる地銀や信金信組です。戦争や自然災害で生命に危険が及ぶ時は、家族やコミュニティの絆、人と人との助け合いがなければ生き残ることはできません。かつては「講・無尽会」といった村落共同体の公益のためにお金を回す仕組みがありました。そこには地域それぞれの自治のシステムがありました。我々に必要なのは21世紀版の新しい自治とコミュニティバンクであり、それを実現させる正しいリーダーシップです。

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