グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

BRICs会議を2週間後に控え、今後大きな通貨体制の変更があるのか? 2020年代は1970年代と同じくらい激動の10年になる

次回放送 2/29 20:00〜

 8月22日にBRICs会議が開かれます。注目点は、BRICs経済は今後長期に成長できるのか?そして、BRICs共通通貨が「グローバルサウス」に流通し、ドルの覇権を奪うのか? であります。

 8月6日に中露艦船11隻がアラスカ沖を航行し、米国領海には侵入しなかったものの米軍駆逐艦4隻が監視にあたったというニュースが報じられました。中露はこのように軍事面でアメリカと対峙しています。21世紀が始まった頃、米中が世界を共同支配するような「カップリング(連結)」が言われましたが、今や完全に「デカップリング(切り離し)」状態に変わっています。

 一般に、世界の主要国の力関係や同盟関係が変わり、世界の秩序が変わる時、通貨体制にも変化が生じます。それでは、1971年から約50年の歴史を振り返ってみます。

1970年代に起こったこと

 1971年には二つのニクソンショックがありました。当時、米国は、20年近く続いたベトナム戦争(1955-1975年)で財政が疲弊し、米ソ冷戦においてソ連との核戦争で優位性を失うという危機感がありました。

 そこで、ニクソン大統領はキッシンジャー博士(安全保障大統領補佐官・国務長官)と共に打開策を講じました。ソ連と対立しつつあった中国と国交を開き、世界秩序の変化を主導して引き続き起こすことで、ソ連より優位に立とうとしたのです。

 1971年7月15日に、ニクソン北京訪問が発表され、米国が共産主義中国(中共)に接近するという予想外のニュースに世界が驚きました。そして、その1ヶ月後の8月15日に、第2のニクソンショックがありました。ニクソン大統領が突如、金とドルとの交換を一時停止するとテレビ・ラジオを通して国民に発表したのです。これは「ドル・ショック」とも言われます。米国は固定相場制から変動相場制へと切り替わり、ニクソン大統領は自らの国益のために、第2次世界大戦後に構築されたブレトンウッズ体制のルール変更を行ったのです。

 ニクソンショックをきっかけに、70年代には大きなイベントが相次ぎました。1972年にはウォーターゲート事件、73年 オイルショック、74年 ニクソン大統領辞任(8月9日に辞任)、76年には周恩来と毛沢東が亡くなり、78年にはイラン革命が起こり、第2のオイルショックが起こりました。また、78年に鄧小平が権力の座に就き、毛沢東とは異なる「改革開放路線」に舵を切りました。

 そして通貨においては、73年のオイルショック以降、ペトロダラー(日本ではオイルマネー)の時代となりました。国際石油取引をドルで一元化して行うことで、ドルを基軸通貨とする金融システムを維持してきたのです。このように1971年から、世界の流れは大きく変わったのです。今日までの流れをざっくり振り返ります。

1980年代〜2023年を振り返ると・・・

 1980年代は、レーガン大統領の時代でした。金融と軍事を国家戦略の中心に置き、特に「戦略防衛構想」(大陸弾道弾を宇宙空間で迎撃する所謂スターウォーズ計画)でソ連に対し圧倒的な優位性を獲得し、冷戦終結に動きました。映画「ウォール街」や「スターウォーズ」は当時の世相を反映しています。

 1990年代は、クリントン大統領の時代でした。軍事上の通信技術ワールドワイドウェッブ(www)は冷戦終結後に民営化され、インターネットとして広く社会に普及し、IT革命を巻き起こしました。「ウィンドウズ1995」の世界同時発売は、IT革命が世界に広がる象徴的な出来事だったといえます。

 当時、中国では江沢民(1989-2002年)が鄧小平路線を引き継ぎ、市場開放の波に乗って米国との関係を深めていきました。

 そして、21世紀の最初の10年は「中国の時代」といえます。2001年に中国はWTOに加盟し、その後「世界の工場」として高度成長を成し遂げました。胡錦濤(2002-12年)の頃、グローバル化、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南ア)の台頭が目立ちました。ちなみにBRICsと名付けたのはゴールドマンサックスのエコノミスト、ジム・オニールです。

 BRICs新興国(エマージング)は、人口が多く、国土も広く、資源も豊かです。中国は急速な成長過程で、新興国から大量の資源を輸入し、その貿易が他の新興国の成長も促しました。

  2010年代には、2008年のリーマンショック後の世界同時不況の煽りを受け、先進国の中央銀行は超緩和政策を実施しました。そんな中、オバマ大統領と習近平主席が接近し、米中蜜月時代が続きました。が、2016年にはブレクジットとトランプ大統領の登場によって、潮の流れが変わっていきます。

 トランプ政権下で米国は世界最大の石油輸出国となり、強いドルと米国中間層の復活を目指し、米国経済は上向いていました。しかし、2020年3月に世界同時多発的にコロナショックが起こりました。(この時は東京オリンピックも一年延期となりましたね。)

 2020年11月の大統領選挙では不正投票が横行したにも関わらず、バイデン政権になりました。それ以降、米国は急速に「脱炭素」へ動き出し、石油業界を敵視し、また、サウジや産油国との外交関係もギクシャクしています。「ペトロダラー」の基盤となる石油を外してし、1971年から米国が作り上げた「ペトロダラー」の秩序を変更しようとしています。これが何を意味するのか?

 ちなみに、中国のGDPは2001年には日本の3割でしたが、20年後には日本の3倍となっています。米中がデカップリングする中、我々日本もまた、経済軍事大国となった隣国中共とどう向き合うのか?喫緊の重大課題であります。

グローバルサウスとは・・・

 さて、目下の世界秩序とはどのようなものか?下の世界地図をご覧ください。西側の主要メディアが伝える世界観を示しています。赤く記された陣営(欧米諸国、日本、韓国)と、グレーで示された陣営に分かれています。グレーの領域には、ユーラシア(中・露・インド)と中東、アフリカ、中南米といった南半球の大部分(豪とNZを除く)が含まれます。

 おそらく「グローバルサウス」とはこのグレーの領域で、1950年代には「第三世界(資本主義、共産主義の2大陣営に属さない非同盟で開発途上の国)」と呼ばれた諸国が含まれると思います。特に、BRICsにサウジを加えると強力なグループ(経済ブロック)を形成します。その特徴は以下のようです。

  • 世界の人口の約5割を占める
  • 世界のGDPの約5割を創出
  • ロシア、サウジという2大石油産出国を含む
  • ロシア、中国という核保有国を含む 

 「BRICs+サウジ」の中で、インドは「非同盟」主義を貫いています。例えば核保有国でありながらNPT(核拡散防止条約)非批准国です。また、「開かれたインド太平洋」の軍事的枠組みで欧米日豪に協調して、どちらの陣営にも属さない独自外交を行なっています。インドは、人口の面でも中国を抜き世界一、そしてGDP成長率も6%以上とダントツです。大国インドの今後の動向には注目すべきです。

米民主党と中共との交渉事

 さて、ニクソン後、特にクリントンからオバマを経てバイデン政権に至るまで、米国民主党は中国の民主化を進めるのと同時に、水面化で中国の経済発展に伴う相当の利益供与の取引があったものと想像できます。そうでなければ、バイデン政権に至るまで、米国が圧倒的な優位な石油業界、自動車業界、そしてハイテク、ITにおいて、なぜ、そこまで中共の優位性を高める必要があったのか?

 例えば、クリントン政権で副大統領を務めたゴア氏、「不都合な真実」で地球温暖化を訴えてきました。今では、バイデン政権の「グリーン・ニューディール」の伏線となってきた流れとして理解できます。EVや太陽光パネルは中国の得意分野です。

 ここにきて中共は自分達が世界の中心であるという野心を剥き出しにし、バイデン政権の弱みを握り交渉を有利に進めようとしているように見えます。百歳のキッシンジャー博士が7月18日から訪中した様子を見ても、1971年と同じくらい大きなインパクトのある交渉事があるはずです。それは何か?

 そのヒントになりそうな記事が8月8日付South China Morning Postで報じられました。ウクライナ停戦に向けて、サウジが仲介しジェッダで中国と米国の会合が予定されているという内容です。米側からはサリバン(大統領補佐官)とヌーランド(国務次官補)という強力なネオコンが参加予定です。

一方、来年11月の大統領選挙に向けて、バイデン大統領は不人気を挽回しなければなりません。米国民はウクライナに多額の税金を投入する政権を支持していません。バイデン政権下のネオコンも自分たちが生き残るには中国に何らかの譲歩が必要と考えるはずです。そして、そのターゲットになるのは日本なのか?台湾なのか?

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