グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

BRICs経済は今後成長できるのか?アジアの2大大国、中国とインドを比較

次回放送 2/29 20:00〜

 経済の3要素「ヒト、モノ、カネ」の点から、中国とインドのこれからの成長性について比較してみます。具体的な3要素とは以下のようです。

  • ヒト:人口、人材(教育)、職業構成
  • モノ:農業、製造業(モノづくり)といった産業構造
  • カネ:マクロ的な金融市場、政府と民間

人口

1.中国

 中国の人口は、14億2570万人(国連人口基金 推定 2023年)。中国は急激な少子高齢化に見舞われています。原因は1979-2015年にかけて36年続いた一人っ子政策に起因しています。

 【グラフ1】は中国の人口動態を示しています。左から、1979年「一人っ子政策開始時」、2001年WTO加盟、そして、2022年の3つの時期を示しています。1979年の人口構成はピラミッド型です。そして、2001年に中国が工業化を推し進めた時期には、15-50歳の生産人口が分厚く、豊富な労働力の供給がありました。しかし、2022年には最も生産かつ消費が盛んな年代である20-50代が減少しています。

【グラフ1】中国の人口動態の推移

2.インド

 インドの人口は14億2860万人、【グラフ2】はその人口動態(2022年)を示しています。グラフは、中国の1979年と類似したほぼピラミッド型です。若年層の増加が著しいことが見て取れます。「分厚い中間層」が今後の経済成長を牽引していけるかがポイントです。

【グラフ2】インドの人口動態(2022年)

産業構造の比較

1.中国

 【グラフ3】は1982年から2022年までの中国の産業別GDP貢献度を示しています。(GVA: Gross Value Added 総付加価値 個々の産業によるGDPへの貢献度を示す)

 中国では1982年に農業が全体の25%、製造業が40%近くを占めています。そして、1990年代に改革開放政策が本格化すると、農業が減り、製造業がその分増加します。WTO加盟直後の2002年以降は「世界の工場」として製造業が全体の6割以上を占めています。

 そして、農業と製造業以外のサービス産業と鉱工業の割合にはあまり変化が見られません。

【グラフ3】

2.インド

 【グラフ4】は1982年から2022年までのインドの産業別GDP貢献度を示しています。1982年には農業が全体の40%を占め、20%が製造業、30%近くがサービス産業です。インドでは農業の比率が減少し、その分サービスセクターの占める比率が増加していきます。この場合のサービスとはアウトソーシング、ハイテク、コンピュータ、エレクトロニクス関連で、2002年以降、IT革命とグローバル化が進行し、英語圏インドは、欧米からのテレマーケティングやカスタマーサービスの外注を受けるなど、ITリテラシーの高さと安価な労働市場が魅力となりました。

【グラフ4】

 このように、中国とインドの経済成長において、その産業構造はだいぶ異なります。中国では製造業が支配的で、インドではサービスセクターが成長を牽引しました。

インドにおける産業別雇用

 【グラフ5】はインドの産業別就業人口比率を示しています。農業人口は多く、全体の45.4%です。主要産業のサービスセクターに従事する労働人口の割合は29.7%、建設業12.4%、製造業11.6%、公益事業 0.5%、鉱物/採掘 0.3% となっています。

【グラフ5】

 次に【グラフ6】は、非農業部門で就労者の内訳を示しています。繊維業に 32.8%、飲食15.8%、鉱物資源6.9%、その他、インドの花形産業である工学系エンジニアリング、化学、製薬、自動車、コンピューター・エレクトロニクスといった付加価値の高い分野で働く人々の割合は1%から2.4%とそれぞれが小さいです。

【グラフ6】

 このように、インドでは、高度人材を必要とするセクターに従事する人々は全体から見るとほんのわずかです。巷ではインド工科大学など優れた教育を受けた人材が、世界の金融やITの多国籍企業でトップに詰めるケースも多いですが、それはインド国内の中では極々ほんの一握りです。

 例えば、農業従事者の多くは農村地帯でまともな初等教育すら受けられないのが現状です。インド政府の初等教育は貧困といわれています。

政府の役割について

1.中国

 市場開放と言われながらも、共産党が経済活動を支配します。経済合理性よりもイデオロギーが重視され、非効率的な投資も行われます。昨今の不動産開発市場の崩壊や不動産を中心とした金融破綻は凄まじく、日本のバブル崩壊時の銀行の不良資産は百兆円と言われますが、中国はおそらくその20倍以上の隠れた不良資産を抱えていると試算されています。

2.インド

 保護主義貿易が続き、改革開放のスピード感は中国よりもずっと遅いです。さらに、インドでは高成長だがインフレで金融引き締めが実施され、財政赤字は膨らんでいます。

 【グラフ7】はBRICs及びトルコ、インドネシア、メキシコのGDP比政府債務(%)を示しています。ブラジルとインドが、債務比率が高いです。ちなみに、中国の財政赤字は推定で、GDPの350%以上にのぼると言われ、インドよりもはるかに高いです。

【グラフ7】

(日生基礎研究所 インドレポート 2022 0601)

 昨今、中国のサプライチェーンから離れていく企業が多くある中、そうした企業が中国の代替としてインドに移り、インドがそうした漁夫の利を得て、今後広範な生産的中間層を創出して、成長を続けられるのか?インドに大量生産を稼働させる製造業の基盤があるのか、また製造業の必要とする労働力が足りているのか、といった基本的な課題があるかもしれません。

【大井幸子の最新無料セミナー】
3月17日(日)2024年のキーワードは『中国金融崩壊!』と『もしトラ!』

参加費:無料 主催:サンワード貿易株式会社
東京都内・WEB 同時配信

 

今回のテーマは世界マーケットの行方。近年中国の金融崩壊によるマネー流出や「もしトラ」と世界的に注目を浴びているアメリカ大統領選といったビックイベントが起こっている中、2024年の世界マーケットはどのように動いていくのか?

詳細はこちらから

コメントは締め切りました。