グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

ヘッジファンドとプライベート・エクイティが米国企業金融のメインストリームに

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 大手百貨店JCペニー、アップル社、ピアノの名門スタインウェイの経営に、大物「アクティビスト」たちが乗り出し、フレンドリーもしくは敵対的な「もの言う投資家」としてヘッジファンドとプライベート・エクティが企業金融に多大な影響力を行使しています。
 ヘッジファンドのパーシング・スクウェア(Pershing Square Fund)を率いるのはビル・エイクマン。パーシングはJCペニーの18%を保有しています。FT紙(8月14日記事)によれば、2011年、エイクマンは、当時のJCペニーのCEO(最高経営責任者)マイク・ウルマンを解任し、ロン・ジョンソン(元アップルのリテールの責任者)をCEOにすえました。しかし、ジョンソンは17ヶ月で失脚しました。2012年に、JCペニーの売上は25%も落ち込み、株価は57%下落しました。エイクマンはその責任を取って取締役を辞任しました。そして、ウルマンが再びCEOに返り咲きました。ジョージ・ソロスもまたJCペニーの約8%を保有しており、エイクマンとは反対の立場を取っていました。
 かつてJCペニーを買い支えていたエイクマンに対して、カール・アイカーンはエイクマンとは反対の立場を取っていました。そのアイカーンは、アップル社の株式を大量保有していることを公表しました。FT紙(8月15日記事)によれば、アップル社CEOティム・クックと自社株買いについても協議したとツイッターでつぶやいたとのことです。アップル株価は5%近く上げ、上昇気流に乗ったようです。
 アップル株といえば、グリーンライト・キャピタルのデイビッド・アインホーンが、新規の恒久配当付き優先株発行(iPrefs)を要求し、アップル社を訴えていました。アップル社はそうした訴えにもかかわらず自社株買いを続け、相ホーンも訴えを退けたようです。
 さて、160年の伝統あるスタインウェイ社が売りに出ています。大手プライベート・エクイティのコールバーグ(Kohlberg & Co.)が一株当り35ドルでビット、その後、韓国のSamick Music Instrument 社が39ドルを提示、その後、38ドルを提示していた大手ヘッジファンドのポールソン(Paulson & Co.)が40ドルを提示し、買値がつり上がっています(8月15日FT記事)。
 先週一週間の記事を追いかけるだけでも、1980年代に投資銀行が行って来た派手な企業買収の主役がヘッジファンドやプライベート・エクイティグループに取って代わっています。
 しかしながら、もの言う投資家、あるいはツイッターでつぶやく投資家、何でも良いのですが、本当に株主のためになっているのか、株主との利益総反がないのかと心配になります。一歩間違えれば「インサイダー」の世界です。逆に見れば、インサイダーそのものがヘッジファンドやプライベート・エクイティなのですが、そうした世界が明るみに出てしまったというべきかもしれません。

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