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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

QEが終わり、構造改革がやってくる

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 去る5月22日にバーナンキFRB議長が量的緩和(QE)縮小を初めて示唆したことから、債券市場は弱気に転じ、投資資金は債券から株式へシフトしています。
 かつて、1994年と2003年に、連銀が短期金利を急ピッチで上昇させたために債券相場が大きく下げたことがありました。
 FT紙マイケル・マッケンジー記者は「QE終了が債券市場の売浴びせを招く」と述べ、今回の債券相場の下げ要因が、連銀が債券購入で長期金利上昇を抑制してきた政策を変更することにあると指摘しています(8月10/11日ウィークエンド版 “End of QE set to drive bond sell-off to remember”)。
 米国では、リーマンショック後続いてきた金融緩和によって、企業は債券市場を利用して多くの資金を調達してきました。発行済社債の総額は9兆ドルと、2003年の2倍の規模になっています。今後数ヶ月、風船のように膨らんだ債券市場から空気が抜けて行くように益々多くの資金が株へシフトしていくと予想されています。
 私は、長期金利(米国債10年物金利)上昇が住宅ローン金利を押し上げ、住宅需要が冷え込むことを懸念しています。実際、住宅ローン金利は3.43%(4月末)から4.64%(7月末)に上昇しています。モーゲージ市場では、ローンの早期償還が減り、平均返済期間が長くなることからリスクが増えています。こうした背景から、米国の株高といっても住宅関連が上がっているわけではなく、虚ろな上昇相場に見えます。
アジア市場でも債券ファンドから投資資金が流出しました。特に、バーナンキ発言を受けてSHIBOR(Shanghai Inter Bank Offered Rate)が上昇し、流動性逼迫の恐怖が走りました。アジアのジャンク債市場は下げ、シンガポールの友人のアジア債券ヘッジファンドも7月の運用実績が3%近く落ち込みました。
 中国でもシャドーバンキングの実態が明らかになるにつれ、信用リスクが高まっています。アジア債券を運用するヘッジファンドの友人は、信用リスク回避に対して中国は米国のような量的緩和を行わずに、むしろ大掛かりな「構造改革」に舵を切ると見ています。その政策の中身とは、資本の自由化、規制緩和、民間の活用など、どこか小泉改革で聞いたようなスローガンです。
 
注: 最近の債券相場についてニューヨーク連銀のリサーチ(8月5日付け)が参考になります。
http://libertystreeteconomics.newyorkfed.org/2013/08/the-recent-bond-market-selloff-in-historical-perspective.html

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