グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

経済的合理性を貫けない政治は国を滅ぼす

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 大衆迎合主義や衆愚政治は、国家財政の破たんと大量失業といった経済的な苦難を国民にもたらす。

 国民へのばらまき財政、税金をまともに徴収できない、国が赤字をごまかすといった規律・節度のないギリシャが破たんするのは理にかなっている。こんな経済合理性のない国がまかり通るのであれば、資本主義そのものが成り立たない。

 しかも、民族として苦難をくぐりぬけた体験のない国民ほど、危機に弱いように思われる。危機管理がしっかりしているのはイスラエルのような国家で、幾度もの征服をくぐりぬけてきた民としてのユダヤ人はいざとなれば結束して危機に立ち向かうだろう。また、北朝鮮の脅威にさらされ、アジア危機で辛苦をなめた韓国でも、国家の指導者がトップリーダーとして危機管理を仕切るシステムができあがっている。

 「なぜ悪いことをしていないのに理不尽に酷い目にあうのか」。この問いの答えを見出そうとするのが、苦難の神義論である。苦難を正当化する神の摂理があってこそ、人は信仰の力で結束し、苦難に立ち向かおうとする。この力がないと、苦難に負けて服従を受け入れ、民族は滅びてしまう。

 今の日本のTPPの議論を見ていると、米国の言いなりだとか感情論や脅威論が先に立っている。なぜもっと経済的合理性の観点から冷静な議論がないのか。何が事実なのか、苦難があるとすればそれは何か、どのように乗り越えられるのか、乗り越えるために日本人を結束させ、モーティベートする源泉はどこにあるのか。

 ギリシャやイタリアといった苦難の神義論の弱い国では、経済的困難からの立ち直りも弱いのではないかと予想する。長いことゆでガエルになっている日本も、この危機をバネに成熟した社会として再び成長へ向かうことはできるだろうか。苦難の神義論すらない日本。しかたない――諦念ですませるのか。自滅をよしとするのか。

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