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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

利権が利権でなくなるとき ロシアの場合

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この数日間の海外トップニュースは「プーチン大統領がホドルコフスキー元ユーコス社長を恩赦した」という報道でした。ソ連からロシアに権力構造が大きく変わったときに殖産興業の払い下げで一大勢力となった「オリガーキー」の資金は、主に原油と天然ガスでした。ロシアは原油と天然ガスの生産に力を入れ、また資源エネルギー価格の上昇と相まって経済成長し、BRICsにまでのし上がりました。(原油と天然ガスはロシアの輸出の65%を占めます)。当然、オリガーキーも巨万の富を得ました。ミハイル・ホドルコフスキー氏もその一人でした。プーチン大統領は国家権力の掌握を目指し、新興勢力のオリガーキーを排斥したので、ホドルコフスキー氏は政敵として10年近く捕らえられていました。

今回の「ホドルコフスキー恩赦」のウラには、シェール革命があります。
米国はシェールガス・シェールオイル油田開発をナイジェリアやメキシコでも進め、欧州には安いガスが供給されるようになりました。価格競争が起こり、ロシアからの天然ガス輸出も高価格を維持できなくなっています。今後、原油価格の下落や世界の需要が縮小すれば、ロシアの外貨獲得にも支障が出てきます。ユーコスやガスプロムは、以前ほど国に巨万の富をもたらす存在ではなくなりつつあるのです。

ホドルコフスキー恩赦の理由として、ソチオリンピック開催でロシアの評判を上げるためという報道もありますが、実際には、利権の甘い汁もこれ以上はムリという経済的理由が大きかったと推測します。

 

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2005H_R21C13A2000000/

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