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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

軋み始めたブッシュ・ドクトリン

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この3週間あまり、NY、東京、ワシントンDCと移動した。復活祭のころ、日本では民主党小沢代表が登場し、「がらがらぽん」でいよいよ日本の政界も復活するのかと思いきや、まず小沢氏自身が生まれ変わってもらわないと変革は実現しないだろう。

ワシントンでは母校ジョンズホプキンズ大学院SAISのエネルギー資源会議に参加した。ケンブリッジ・エネルギー研究所のヤーギン氏が基調演説した。昨今の原油高と異常気象から、ワシントンでは、代替エネルギーやグリーン・エネルギーの開発にテクノロジーを有するベンチャー企業への投資も盛んで、また、エタノールをはじめとするバイオ燃料開発に政府が融資保証するなど資金供与も活発化している。1970年代のオイル・ショックのころには存在しなかったプライベート・エクイティやベンチャー・キャピタルファンドによる資金提供が、新技術の発展を促すとみられる。

また、原油や天然ガスの産出地域が政情不安な地帯に集中していることから、地政学上のリスクは高い。特にガスについてはロシア、イランが国際舞台の踊り場にいて、その消費市場として中国の利権が絡んでいる。ロシアは日中両国がガスの利権を争うことで優位な立場を確立している。

中国とインドの経済成長から需要サイドの拡大がまだ続くこと、ハリケーン・シーズンに入るにつれ供給サイドの不安が増幅されることから、資源価格の高値はしばらく続くだろう。また、中国での利上げは、すぐにはエネルギー資源価格高騰の抑制にはならないだろう。

米国経済は今年第一四半期のGDP成長率が4.8%と好調である。ただし、夏場のガソリン代高騰と金利高から、今年後半には個人消費が冷え込み、景気がやや軟化するというのが大方のエコミスとの意見である。しかし、初夏の明るい日差しのなか、人々の気分も高揚し、70年代のオイルショックのときにように消費を抑える行動に出るようには見かけられない。

今のところ企業業績は悪くない、エクソンなどは記録的収益を上げている。新規住宅販売件数の伸びも13.8%と住宅市場はまだまだバブルの余韻が強い。4月27日の議会証言でバーナンキFRB議長はエネルギー資源価格の高騰を懸念し、6月には2年間続いた利上げは一時終始という見方が強まっている。

最近気になるのが、イラク占領をめぐる軍部と国防省の確執である。トップ退役軍人が群れをなしてラムズフェルド長官罷免を要求するなど、異常事態である。本日(4月29日付け)のウォールストリート紙にはこの事態を重く見たジョージ・シュルツのインタビュー記事が興味深かった。レーガン時代に今日の一国覇権体制「ブッシュ・ドクトリン」(金融と軍事面における一人勝ち)の基礎を築いたシュルツに言わせると、「こんなことはあってはならない」。
米国の「がらがらぽん」のほうがよほど恐ろしい。

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