グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

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ドル暴落説について

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3月最後の週にジュネーブとチューリッヒへ出張した。ホテルに着くといつものようにパソコンをつないでCNBCやCNNをつける。同じTV局でも欧州版は米国版と論調が違って興味深い。欧州のメディアはこぞって米国の住宅市場の落ち込み、サブプライム・ローン貸し倒れの増加、米国景気は失速するだろうとかなり否定的なコメントを連発した。

ちょうどスイスへ発つ前に東京で久々に為替研究会に出席した。この会合の日の夕刻にロシアで油田を持っている某銀行が猛烈に介入してきたため何人かのディーラーが欠席を余儀なくされた。それでも、往年の為替ディーラー仲間たちでいつものように和気藹々と意見交換した。日本では「ドル暴落説」の声が聞こえたが、ディーラーたちは対ユーロでドル安を見越しているが、円高ドル安という予想はあまりなかった。

ドル暴落は米国への信頼が失墜したさいに起こると予想できる。そうした深刻な事態は、米国住宅ローン市場の信用リスクだけで引き起こされるわけではない。サブプライムのデフォルト上昇が全世界的な株同時安にすぐに直結するわけではない。米国の企業収益が急速に下落する、同時にインフレ懸念が急速に高まり、連銀が思い切った利上げに踏み切る、こうしたシナリオは考えにくい。日米ともに金利上昇はあるものの、じっくりしたペースで上昇する限り極端な円高はないと思われる。それよりもこわいのが、米中の金利差の逆転(ポールソンがもっとも恐れている!)である。

米国のマーケットは毎日KKRなど大手投資ファンドのニュースで賑わい、1980年代終わりのM&Aマニアの時代に戻ったかのような雰囲気である。まさにバブル崩壊の入り口に立っているような気配だ。米国の株高が終われば、日本の不動産バブル崩壊の時のように、上海、マンハッタン、ロンドンなど世界中で値上がりした不動産バブルが次々と消えてゆくだろう。その意味では、今回の調整局面はバブル崩壊直前の出来事、つまり、値上がりの激しかった新興市場の株式、コモディティにいったん調整が入ったと見るべきかもしれない。

米国のファンダメンタルズからみれば、世界景気はこれからたらたらと長い下り坂を下っていくような感じがする。ただし、金融市場は常にマクロ経済を反映して動くわけではない。為替についてはドル需要は原油や天然ガスなどエネルギー資源決済に関わるし、また、日本株について、相場は「外人の売買」の局面に左右される。

大量のオイルダラーを含むグローバルマネーはオフショア金融センターへシフトし、資金移動の大きさを増している。基本的にグローバルマネーは予測可能性を重んじ、突然のリスクを嫌う。これまでゲームプランの予測可能性は米国覇権主義によって成り立ってきた。このプラン全体を破壊するリスクをとって得られるリターンは何か。その解が明確でない限り、マネーの世界に「創造的破壊」はありえない。

レマン湖のほとりのホテルにはアラビア語のTV番組はあったのに日本語放送はなかった。日本のプレゼンスが薄れたのかと何となく心配になった。日本市場もまた、グローバルマネーの大海では浮き草のような存在だ。風光明媚な美しい国という点ではスイスも日本も似ているが、時計と金融だけで立国しているスイスの存在感は確かなものだった。

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