復興トモダチ作戦
原油価格と金価格が高騰している。バレル当り120ドルを超えれば産油国には莫大な富がもたらされる。石油資源を原資とする政府系ファンド(SWF)は企業買収に乗り出すなど、グローバルマネーの流れが変わり始める。結論から言うと、マネーはいったんウォール街やロンバート街を経て投資運用先を求めて、日本にもやってくる。復興需要や経済の実態を半年ほど先取りして、日本株は1万2千円台まで上昇し、企業買収も活発化するだろう。
内戦の続くリビアから紛争は、スーダンやコートジボラールなどアフリカ大陸へ、また、サウジ、バハーレン、イエメンなどアラビア半島へ広がり、中東からイラン、イラク、パキスタン、中国へと波及する気配もある。原油と武器が活発に取引されるこうした時期に、米国はリビア攻撃をNATO軍に委任するなど、かつてのような「世界の警官」として積極的な介入姿勢を見せていない。
米国が覇権主義から遠ざかれば、当然のことながら原油や武器取引の決済通貨としてのドルの地位を狙う人民元やSDRでの取引を望む中国の野心が見えてくる。しかしながら、ドルは基軸通貨としての地位を明け渡すことはないし、金融の要は相変わらずウォール街と私は確信している。
原油高で巨大ファンドSWFに巨額の資金が蓄積された場合、その資金は運用先を求めて世界の金融市場を駆け巡る。さまざまな運用商品を開発するには、複雑な投資戦略やマーケットを知り尽くしたプロの経験と知識が欠かせない。投資運用のR&Dはウォール街の頭脳によって生み出され、そして、金融商品は世界の市場に配置される。そのため、金融取引の決済通貨はドルであり、ドルを中心とした決済システムの元締めとして米国大手金融機関はグローバルマネーの流れをしっかりと把握している。
米国こそ、日本の震災で一番儲けられる立場にある。日本の復興に向けて政商GEが大型火力タービンの契約を取ったのもその一例だ。米軍による「トモダチ作戦」の後に来る復興需要に米国メインストリームの業界は貢献してくれるだろう。彼らは日本の優れた技術、特にクリーン・テクノロジーや原子力に関する日本の技術を評価している。米中関係に亀裂が入りつつある今こそ、日本は米国にとって大事なトモダチと認識されている。
これは日本にとって大きなチャンスである。日本の電力や資源エネルギー政策は時代に合わず、ずっと集中治療を必要としてきた。天災を逆手にとっていったん国有化して東電を頂点とした既存体制を外科手術し、経営を刷新し再び株式公開に持ち込む。その際には中国が国営企業を次々と民営化させて米国の投資銀行を儲けさせたように、日本も米国に儲けさせればよい。
1998年に山一証券が破たんしたかつての金融危機にときには、リップルウッド(ウォール街ではそんなファンドを知る人はいなかった)が突如現れ、長銀を買いたたいた。そして新生銀行でおおいに儲けた。これから東電を買いたたくのは誰?危機管理のできない、自らの運命に対してイニシャティブを取らない無責任な日本政府や企業は、「占領される」という敗戦の歴史を繰り返すだけだろう。