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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

2012年はソフトランディング

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 年明けから、ギリシャ国債デフォルトやホルムズ海峡封鎖といったリスクが高まった。が、じっさいは「貧すれば鈍する」といった状況で、お互いの経済を叩きあっても益がないというのが冷静な判断だろう。よって、無益な衝突を起こさない、戦争をしないように、金融市場でも大きなショックを起こさないように、相互にソフトランディングを模索するだろう。その意味で、選挙イヤーの今年は主要国の外交など大戦略に注目したい。

 先日会ったフランス人のヘッジファンド運用関係者は、米国人は借金漬けで米国経済のほうがずっと脆弱だと話していた。ギリシャやイタリアは地下経済で成り立っているから、格下やデフォルトがあっても国民の生活は大して変わらないのだと言う。

 さらに、欧州の指導者には「ユーロを守る」という誓いがあるという。ギリシャ危機がイタリアやスペインへ拡大すれば、無秩序なデフォルトを起こさないようECBはユーロ支援を惜しまないだろう。そのプロセスをどうするか、見せ金を用意するためECBと各国中央銀行や政府との交渉や手続きには時間がかかりそうだ。そうこうしながら、ソフトランディングを模索しながら「疑似的危機」状態は2013年前半までずるずると続くと予想される。

 イランの核兵器開発の問題については、Strategic Forecastのニュースレターによれば、イランは戦争を起こすだけの性能の高い核兵器は持っていないし、米国・イスラエルはその事実を知っている。米国は原油の安定供給を望むし、イランもまた原油からの収入が必要だ。相互の国益を考えれば、懸命な二国は消耗戦になる戦争は避けるだろう。

 しかし、米国はイラクとアフガンから撤退し、ユーラシアから西太平洋まで勢力境界線を縮小しようとしている。その過程で、イランはアラビア半島に勢力を拡大していく。米国にとって、バハーレンやGCC、サウジの東側でシーア派が勢力拡大するのは大きな不安定要因になる。「中東の液状化」がサウジアラビアに及ばないよう、米国はイランの核開発を断固阻止する必要がある。

 中国もまた欧州や米国への輸出が落ち込み、経済成長を続けるためにアジア地域での勢力拡大が必須になっている。中国は「国家資本主義」を掲げ、どのような手段を使っても国として生き残る大戦略で臨むだろう。その意味で、中国経済はソフトランディングできると思う。

 地政学的に経済を読むと、米国の仕掛けるTPPは中国けん制と日本経済を完全に取り込む意図がある。欧米、そして中国が東アジアへの権益を狙う図式から、1941年のABCD包囲網を連想するのは私だけではないだろう。ここで日本がかつて戦争の破局へ進んだように大戦略を誤り、経済成長を果たせず国家の信用を失えば、旧日本軍のばらまいた軍票のように、円も消えてしまうのではないか。

 各国がソフトランディングするなかで、日本が国として存続できるかどうか、日本の政治リスクが一番問われている。

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