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予断を許さない米国大統領選

米国大統領選挙は投票まであと1ヶ月を切り、候補者による第2回目の討論会が行われた。重要な政策課題に関する前向きな討論というよりは、相互の非難合戦となり、もっともネガティブな内容となったと評されている。

 

大統領選挙は現在、クリントン候補がやや優勢と報じられている。アリゾナ、アイオワ、ジョージア、ミズーリ州ではトランプ優勢、一方、ミネソタ、ニューハンプシャー、ペンシルベニア、バージニア、ミシガン、ウィスコンシン、フロリダ、ノースカロライナ、オハイオではクリントン優勢と伝えられている。しかし、ノースカロライナとオハイオでは特に接戦が予想されている。

 

メディアでは、今の時点で、仮に投票人の男性のみが投票すればトランプ候補が勝利し、女性のみが投票すればクリントン候補が勝利すると伝えている。両候補の政策を見極めるというよりは、投票人の好き嫌いが大きな影響を及ぼすだろう。

 

トランプ候補が女性蔑視発言問題や納税をしていないといったスキャンダルに苦しむ中、クリントン陣営ではゴア元副大統領が応援に駆けつけ、環境問題への対応に取り組む姿勢を強調するなど、ミレニアル世代の支持を取り込もうとしている。

 

今後11月8日の大統領選挙で新大統領が決まり、翌年1月に新大統領が正式に就任するまでの期間、覇権国家米国ではいわば権力の空白が生ずる。8年続いたオバマ政権は、当然クリントン候補へのバトンタッチを望んでいる。そのため、現政権下でくすぶっている諸問題に対して、この短期間である程度処理し、民主党有利に民意を導くつもりである。ここに、大きな課題がふたつある。

 

ひとつは、リーマンショック直後から実施されてきた財政拡大・金融緩和路線からの出口である。FRBは昨年12月に政策金利を上げ、今年12月にも利上げが予想される。中央銀行相場が終焉し、その出口の向こう側に、どのような国家体制や産業構造を構築すべきかといった課題がある。

 

もうひとつは、大きな世界の枠組みの変化である。オバマ政権では、その前のブッシュ政権によるテロとの戦いで拡大した米国の軍事勢力を縮小し、オフバランシング政策に切り替えた。また、シェール革命で米国のエネルギー政策の転換から「中東の春」が起こり、米国はイラク、アフガニスタンから勢力を撤退した。米国が置き去りにした空白地域にはISがはびこり、シリアでは国が崩壊し多くの難民が欧州を目指すといった悲惨な事態を招いている。そして、この空白地帯ではロシアが覇権を押し進めている。米ロは対決姿勢を強め、目下、シリアや北朝鮮では大変な緊張を孕んでいる。

 

日本はこれまで米国の軍事的護衛のもとに中東からの安定した原油の輸入を続けてきた。しかし、米国の情勢変化から安倍政権はロシアからの資源協力を求めようとしている。12月15日に安倍首相はプーチン大統領と山口での会談を予定している。12月13日FOMC直後である。これは極めて危険な賭けである。

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