グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

トランプ新大統領による「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」とパラダイムシフト

米国にトランプ新大統領が誕生した。マーケットはクリントン勝利を予想していたため、トランプ勝利確定で9日の日経平均株価は大きく下げた。しかし、米国東部時間の9日深夜、トランプ氏が米国民に和解を求め、別人のような穏やかな態度で勝利宣言演説を行うと、翌日の米国株式相場に安堵感が広がり、大幅上昇に転じた。

 新大統領が決定したことで、マーケットでは大きな不確定要素が取り除かれたが、相場は条件反射のように上下し、要注意である。

 トランプ陣営は「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」のためにはあらゆる手段を尽すだろうし、米国議会も上下院で共和党優勢となり、リーマンショック後に登場したオバマ政権の政策の巻き戻しが起こるだろう。

 「米国第一主義」とは、端的に言えば、米国の利益を米国本土に持ち帰ること、米国が経済金融・軍事力強化による覇権確保にほかならない。日本や中国、そしてアジアの安全保障、通商貿易・通貨体制全体に影響を与えるだろう。米国の製造業の競争力強化、輸出促進の観点からは、円安、人民元安への強い抵抗があるだろう。また、リーマンショック後の「中央銀行相場」も出口に向かい、12月にFRBによる利上げが実施され、金融政策も正常化に向かうだろう。

 米国民は変化を強く望み、新大統領はその期待に応え、変化を速く起こそうとする。だが、一体どのような変化なのか、具体的にはまだ見えていない。2017年は、トランプ陣営に的確な助言をできる人材がいない場合、権力の濫用、あるいは権力の真空状態が起こりやすい環境となるリスクもある。

 いまのところトランプ氏が選挙中に示した政策は、減税や交通インフラ整備への大型財政支出など「ビジネス寄り」で、マーケットの期待感が高まったが、本当の実行性はこれからの課題となる。また、トランプ個人には連邦税未納などスキャンダルの火種もあり、大統領就任直後から1年ほどはどのような変化をもたらすのかという期待と、新大統領を弾劾する動きとが頡頏するのではないだろうか。

 欧州に関しても、反エリート主義や既存メディアへの反感といった「トランプ現象」は、英国EU離脱問題のごとく、欧州大陸にも波及し、仏・ドイツの国政選挙では「自国ファースト主義」の政党が大きく躍進しそうだ。

 日本にとっては日米同盟の見直しや経済金融・軍事面で相応の負担を求められることになるだろう。私には、新大統領が日本に対して「もっと自立せよ」と言っているようにも聞こえる。岸元首相(安倍首相の祖父)が築いた日本の戦後55年体制が完全に終わり、パラダイムシフトが起こる時である。日本も「ジャパン・ファースト」で、国内の成長戦略を見直し、産業構造の変革や国民経済を立て直す好機となるのではないか。既得権益や既存の政治を見直す意味で、変化をチャンスととらえるべきだろう。

 新著『円消滅!』で記した諸事態は、トランプ大統領登場で予想よりも速いスピードで進行すると私は考えている。

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