グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

国際金融市場の三つの悪夢

悪夢その一 再び信用バブル

日米欧の量的緩和とゼロ金利政策のおかげで、マーケットには投資資金がだぶつき、少しでも高い収益を求めて駆けずり回っています。欧州にはデフレ懸念があり、信用市場は過剰に膨らんでいます。

まず、米国ではCLO(ローン証券化商品)販売高が年初から420億ドルを超え、年末までに1000億ドルに達するとみられ、信用過剰がピークに達した2006年のCLO発行高を超える勢いです。さらにCLOをさらに証券化した「CLO 2乗」商品への需要も高まっています。(FT紙5月19日、“Bundled debt sales set to trump levels seen at height of credit crisis”)

また、米国ではプライベート・エクイティ(PE)ファンドに投資資金が溢れ、バイアウト・ブームに沸いています。しかし、優良案件はわずかで、せっかくの投資資金が行き場がなく、使われずに滞っています。こうした「ドライパウダー」と呼ばれる資金残高が380億ドルに達し、昨年より11%上昇しました。(FT紙5月19日 “Scarcity of deals spurs buyout price surge”)

さらに、米国市場では株式と債券のボラティリティ(変動率)が同時に下落したまま低位安定の状況にあります。1990年以来こうした事態が起きたのは1998年と2006−07年の2回だけで、関係者は過剰信用(クレジット・バブル)の警戒を強めています(FT紙 5月22日 “The Short View”)。ボラティリティが低下する局面でヘッジファンドは収益を取りにくく、レバレッジを大きくします。LTCMも行き過ぎたレバレッジのために損失が膨らみました。(ロシア危機について詳しくはこちら https://globalstream-news.com/wpgsn/hedge_fund_report/post-1607/

 

悪夢その二 欧州でクレジット・バブル

欧州でもクレジット・バブルが見られます。英国の不動産市場では住宅価格がこの四月までの1年間で10.9%も上昇し、住宅ブームとなっています。リーマンショック以前の米国のような様相です。住宅ローン証券化商品(MBS)の発行高も増え、同時にサブプライムローンの証券化商品も出回っています。英国中央銀行とECBはローン申請の規定が厳しくなっているため、かつてのような借り手のデフォルトが増えるような事態は言っています。(FT紙5月20日 “UK house boom fuels subprime ABS)

しかしながら、株式市場と不動産市場が活況な一方で、経済の実態はデフレ不況を懸念するほどで、移民問題がじわじわと社会不安をかき立てます。デフレ下の欧州におけるクレジット・バブルはヘッジファンドにとっても悪夢です。収益を高めようとレバレッジを大きくすればするほど、その債務はデフレ下で膨らむ一方です。

問題は、ローン申請の基準ではなく、市場の流動性にあります。証券化商品は公募市場とは異なり、流動性を欠きます。それゆえ、流動性逼迫(クレジット・クランチ)に際して流動性を失い、値崩れが著しいのです。いち早く売り逃げようとする投資家が売り急ぐために激しい値崩れが起こります。ヘッジファンドは、こうした売浴びせでレバレッジの分、大きな損失を被ります。

 

悪夢その三 BRICs 中ロ接近、インドとブラジル

ガスポルムが中国に今後30年にわたり天然ガスを供給することになりました。(FT紙 5月22日 “Russia and China seal $400 bn gas deal”)。中国とロシアはガスや資源において接近しています。さらに、インドではモディ政権が誕生し、株価上昇に向けて動き出します。

グローバルマネーは再び先進国を離れ、BRICsへと流入するだろうか。中ロの接近、タイのクーデターなどアジアが不安定化することは、日本にとっても悪夢です。

 

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