グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

最前線に立つヘッジファンドをFRBはコントロールできるのか?

 

FRBと英国中央銀行は利上げへ

FRBと英国中央銀行は、長期国債など負債圧縮に動き出しています。FRBは、債券購入による量的緩和策を秋口に終了するとしていますが、そのさいに、金利上昇に備え、国際金融市場でのリスクをコントロールしようとしています。

FRBのこうした動きは、ヘッジファンド規制とも連携しています。グローバルマクロ戦略や高速・高頻度取引(HFT)による売浴びせで引き起こされる急激な債券相場下落を事前に抑制し、大きな金融ショックを引き起こさないよう先制的な防御策を張り巡らそうとしています。

 

レポ取引を牛耳るNY連銀

例えば「レポ取引」。投資銀行が手持ちの米国債や政府系債券を担保に行う数日くらいの短期資金を調達する手法です。逆に投資銀行側が相手方から担保を取って短期資金を貸し出す手法をリバースレポといいます。私がキダーピーボディという中堅の投資銀行にいた頃、仕組債トレーディング・デスクのために、売掛債権を保有する企業との間で頻繁にリバースレポ取引を行いました。

債券運用のヘッジファンドでは仕組債に投資する際にレポ取引を積極的に活用します。米国債や政府債は信用格付けが高く、担保の差し入れに関して、ヘアカット(掛け目)率が10%で、ファンドは担保額面の90%まで資金供与できます。ヘアカットは、ヘッジファンドにとっては大きなレバレッジ効果があります。しかし、急激な下げ相場に見舞われるとき担保価値が減り、カウンターパーティがより高い掛け目を要求してきます。このときに追加担保を差入できないとレバレッジの分損失が急速に膨らみます。

1998年のロシア危機のさいに、大手ヘッジファンドのロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が破綻寸前に追い込まれたのも、同社に貸し付けていた投資銀行がヘアカット率を上げ、大きなレバレッジの分損失が膨らんだためです。

ニューヨーク連銀は、目下このレポ取引市場で最大の参加者となっています。量的緩和縮小から短期金利上昇が見込まれるため、ウォール街との取引において、短期金利をコントロールしていこうとする動きです。具体的には、NY連銀がリバースレポを行うことで投資銀行から資金を吸い上げて行くやり方です。FT記事(6月20日付“’Repo’ turns a corner as NY Fed takes key role”)によれば、レポ取引に依存する投資銀行とそうでないものと温度差があるようですが、FRBの市場操作への介入は深まっているようです。

 

再びLTCMの破綻が繰り返されるのか?

ヘッジファンドがCLO(ローン担保証券)の最も信用格付けが高く、最も利回りの低いトリプルAトランチに投資し、それを担保に高利回りの債券に投資しています。レポ取引の別バージョンのようなCLOを担保にしたクレジット・キャリートレードです(FT記事 6月20日付 “Hedge funds warned over CLO deals”)。こうしたヘッジファンドのトレーディング機会を、ソシエテジェネラルとRBCキャピタル・マーケッツが提供していると報じられています。しかしながら、多通貨のキャリートレードとは異なり、信用取引において流動性が逼迫したときに、このトレードの出口をどのように見出せるのか懸念があります。信用格付けも利回りも高いという取引は「Too good to be true」です。債券相場の危機に関して、LTCMと同じく破綻に向かうヘッジファンドが後を絶たないかもしれません。

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