変調をきたす債券市場 ばらまけど 誰も拾わぬ ヘリマネー

公開日: : 大井リポート | 

norimono_helicopter

 11月8日の米国大統領選挙が2ヶ月後に迫り、「中央銀行相場」の出口も近づいている。このところFRB地区連銀議長数名からの強気発言が相次ぎ、今月20-21日のFOMCで利上げ実施となるか、あるいは、12月まで先送りとなるか、市場は注目している。

 FOMCと時を同じくして日銀の政策決定会議も注目される。日銀はマイナス金利のさらなる深化を掲げるだろう。市場は円安を織り込んでいるが、その割には日本株の上値は重い。外国人投資家は既に日本株への関心をなくしているようだ。

 筆者が大変気にしているのが、3ヶ月LIBORが0.75%を超え、短期金利が上昇している点である。短期金利上昇は借入コスト、調達コストの上昇、ジャンク債など信用度の低い債券にとって価格下落圧力となる。特に米国ではエネルギーセクターでジャンク債が多く発行され、原油価格下落と重なり、シェールオイル関係でデフォルトが懸念される。

参考記事(9月13日付)ブルームバーグ ”Libor’s Reaching Point of Pain for Companies With High Debt”, http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-09-13/libor-s-reaching-point-of-pain-for-companies-with-big-debt-loads

20160919

 債券市場は雲行きが怪しく、変調をきたしているようだ。それは、日銀の究極の緩和策も限界に来ている予兆かもしれない。米国債10年物や日本の超長期債の金利がピョンと跳ね上がるのではという不安が増している。

 インフレターゲットを掲げる日銀・政府には、お金が降ってくれば(いわゆるヘリコプターマネー、通称「へリマネー」)、皆が喜んで拾いに行ってお金を使うという思い込みがある。しかし、庶民からみればお金は自分たちの税金であり、バラまかれて仕方ないから拾うものの、これから増税が来るのを知っているので喜んで使う気にもなれない。

 おまけにマイナス金利で利息税まで取られれば、益々「たんす預金」に励む。これでは日銀がインフレを起こそうとすればするほど、デフレマインドが加速する。加えて、マイナス金利が深化すれば、政府はいっそう高い金利税を民間金融機関から徴収することになる。これでは国内債券市場での運用が極めて困難になり、特に長期安定運用を目指す年金基金や生損保の運用収益をますます圧迫するだろう。

 政府は、名目成長率を高めようとインフレターゲット2%を掲げている。実質成長率が仮に1%とすれば、名目成長率は(1+2)=3%となる。しかし、実際は物価が下がっているので、例えば、名目成長率1%でデフレ率(-0.5%)となれば、1- (-0.5)と実質成長率1.5%である。デフレ基調だからこそ、物価も上がらずなんとか生活ができた。ところが、デフレでは政府債務の実質価値が増大してしまう。この打開策がインフレターゲットである。

 ヘリマネーとマイナス金利が加速し、市場が出口の見えない不安で揺らぐ今、日銀の債券購入規模の縮小や国債市場に買い手が着かないなど何か債券市場に異変が起これば、不安が一気に膨らみ、金利が急騰し、「悪いインフレ」が起こる可能性がある。 問題は、日銀がインフレをコントロールできるのかどうかだ。

関連記事

FRB金利据え置きで、英国国民投票、日本のマイナス金利はどうなる?

15日、イエレンFRB議長は金利据え置きを決定した。米国経済の低調な成長見通しと、23日に実施され

記事を読む

年末までに高まる市場リスク

8月に中国経済の株式市場の下落や原油・コモディティ下落を受けて、国際金融市場のボラティリティが高まる

記事を読む

人民元国際化と「アメリカンドリーム」

11月30日に、国際通貨基金(IMF)は中国人民元を米ドル、ユーロに次ぐ第三の通貨に位置づけることを

記事を読む

FRB利上げ後、日本はどうなる?

マーケットでは6月のFOMCで金融政策が「正常化」に向かうとの見方が強くなって来ている。米国は量的緩

記事を読む

伊勢志摩サミット、消費税増税見送りの後に来るもの

 5月後半の注目は伊勢志摩サミットである。安倍政権としてはサミットを成功させ、7月の参院選を勝利に持

記事を読む

no image

QE とBRICSとの新しい関係

 この3週間近く、FRBによる量的緩和(QE)が縮小に向かうというニュースが、国際金融市場に様々な影

記事を読む

長期化する英国のEU 離脱問題と信用逼迫

 英国のEU離脱問題が今後、世界経済や金融市場にどのような影響を与えるのか。  離脱前と離脱後

記事を読む

no image

再びスタグフレーション?

  ここ数日間、市場参加者の意識に変化がみえる。キーワードは「スタグフレーション」、原油高からインフ

記事を読む

どこまで続くか 円安・株高

年初から外国人投資家が1兆円を超えて日本株を買い越し、国内個人投資家が売り越している。特に、外国人投

記事を読む

FRBゼロ金利解除は間近に? 潮の目が変わるか?

6日に米国雇用統計が発表され、失業率5.5%と労働市場の改善がみられた。 このことから、金融市

記事を読む

  • じぶんちポートフォリオ ヘッジファンドニュースレター
  • 無料メルマガ

    GSニュースメルマガ

    週1回、大井幸子厳選の最新国際金融・経済情報が届く無料メルマガです。

    登録はこちらから メールアドレスを入力してお申込みください。

  • follow us in feedly rss
  • 無料メルマガ

    GSニュースメルマガ

    週1回、大井幸子厳選の最新国際金融・経済情報が届く無料メルマガです。

    登録はこちらから メールアドレスを入力してお申込みください。

  • PAGE TOP ↑