今後の日本株の見通し 今井澂(いまい きよし)氏インタビュー

今井澂氏は、50年にもわたり日本経済をウォッチされ、「伝説の当たり屋」と呼ばれています。つい最近『日本経済 逆転のシナリオ』(フォレスト社)を出版されました。梅雨の合間に、帝国ホテルにて、今後の日本株の見通しについて伺いました。

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ポイント1.PKO(Price Keeping Operation) からPLO(Price Lifting Operation)へ

大井: ちょうど政府の「新・成長戦略」の中身がでた所です。注目は、世界最大級の公的年金基金GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用資産のアロケーション(配分)を見直し、日本株への組入を増やすという内容で、いわばPKO(price keeping operation 価格維持操作)といわれています。政府が買い支えるとなれば、今年後半にかけて株価は明るい見通しと言えるでしょうか?

 

今井: 安倍首相は歴代総理として初めて昨年の大納会に東証に来られた。その日の株価は1万6,291円でした。今年の年末はそれ以上にしたいと政府は思っています。GPIFはまだ株式に投資したわけではありません。実際に買いに入るとしても来年4月以降でしょう。おそらく共済組合など準公的年金や企業年金基金の一部は既に動いていると思われます。

 

大井: 昨年日本株買いで儲けた外人投資家、特にヘッジファンドの動きはどうでしょうか?

 

今井: ヘッジファンドはご存知のように、アベノミクスの流れを先読みして2013年に大きく儲けました。

事の始まりは、2012年11月18日にアベノミクス構想がでて来たときの日経平均株価は8664円、ドルは79.50円でした。当時ゴールドマンサックス・アセットマネジメントのジム・オニールが、その二日後の11月20日付レポートで「We want Abe(我々には安倍が必要だ)」と訴え、円安(100円くらい)・株高を予想しました。第二次安倍内閣が誕生したのは12月26日でした。それから2014年3月までに外人投資家は4兆円日本株を買い越しました。ジョージ・ソロスは円売り日本株買いで90億ドル儲けたと言われています。2013年末までに外国勢は6兆円買い越し、12月26日の安倍首相の靖国神社参拝に失望して、3兆円ほど売り超したと推計されます。そうした外人投資家の資金の半分がヘッジファンドだったと言われています。

今年に入り、外人投資家は3月まで売り超し、5月もまた売り超してきましが、まだ3兆円分は売り残していると思われます。仮にGPIFが日本株へ資産配分を2,3%でも増やしたら、3兆円分は十分吸収できますね。さらに、準公的年金基金やかんぽ生命が尾ひれをつけて買うとなると、外人投資家も値上がりを見込んで買いに入る可能性はありますね。こうなると、株価PKOではなく、PLOです。

 

大井: PLOというと? パレスチナ解放組織ですか?

 

今井: Price Lifting Operation、力づくでも上昇させるという意味です。GPIFはインデックスでは日経225ではなく、JPX400のROEを中心に銘柄選択を意識しています。コーポレート・ガバナンスや透明性のしっかりした企業に外国勢も投資してもらいたいというところでしょうか。

 

大井: 確かに期待感で株価は上昇しますが、過激な策ですね。PLOで今年大納会は昨年を上回る株価になるかもしれませんね。

 

今井: しかしながら、PKOやPLOが成功した試しはありません。1990年代に宮沢政権のときのPKOは大失敗しました。

 

ポイント2.リスクは国債利回りと原油高

大井: さて、先ほどジム・オニールが1ドル100円という水準をズバリ当てたわけですが、今後の見通しはどうでしょうか? GPIFが日本国債の組入れ比率を下げ、日本株や外国株式を組入れるので、国債の金利が上昇するというリスクがあります。

 

今井: そこは日銀がクロスで引き受ける、また、追加緩和で調整すると思います。いずれにしても円売りドル買いの圧力がありますね。

加えて、私は原油価格の上昇もリスクだと考えています。現在のイラク情勢をみると、イスラム過激派ISILは武器も資金も持っています。実は、IEA(国際エネルギー機関)が6月に「World Energy Outlook 中長期にわたるエネルギー市場の予測」を発表しました。そこでは、今後5年にわたりイラクでの増産が見込まれています。今回のイラク情勢は予想に入っていないのです。

さらに、つまり、米国と欧州とでは温度差があります。その差はWTIとブレントの価格スプレッドに現れています。スプレッドは4月に5ドルでしたが、6月には8ドル50セントまで拡がっています。何と言っても欧州にとってイラク問題は地続きで、平服を来て現場に立っているくらい危機感が強いのです。しかし、米国は距離も有るし防護服を着て遠いところに立っている感じです。

いずれにしても原油価格高騰は日本にも影響します。

 

大井: 私は夏場まではそれほど原油価格は急騰しないと思いますが、中長期的には確かにリスクが高いですね。

 

今井:    バレル当り120ドルじゃとまらない、130くらいまではいってしまうだろうと思いますよ。あるエコノミストは、バレルで10ドル上昇すると、日本のGDPを0.25%押し下げると推計しています。20ドル上昇するとGDPがマイナス0.5%、企業の経常利益は3%超下がることになり、その場合、日経平均株価も1000円は下がると見込まれます。

 

大井: 年末まで、原油高、日本国債利回りの上昇といったキワドいリスクがありますね。貴重な情報を有難うございました!

 

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