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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

米中「新冷戦」の行方

11月30日にアルゼンチンで開催されたG20の直後、12月1日に中国大手テクノロジー企業ファーウェイCFOメン氏がバンクーバーで拘束された。中国はカナダの外交官を国内で逮捕するなど、報復がエスカレートしそうである。

 欧米メディアは米中の緊張の高まりを「New Cold War 新冷戦」と呼び、国家対国家の対立を報じている。両国が相互にハイテク製品のボイコット、ハイテク企業の上場廃止や企業買収禁止など、おそらく矢継ぎ早にいくつかのイベントが重なれば、金融市場にとって大きなマイナス影響を与えそうだ。

 実際、この手の動きは以前からあった。ファーウェイは2012年から米議会下院情報特別委員会でその危険性については指摘されていた。それから6年も経っている。また、半導体大手クアルコム社を巡る買収でもこの3月にトランプ大統領が買収を阻止している。

軍事技術(ハッキングやコンピュータウィルスを含む)において、中国のハイテク企業は人民解放軍を後ろ盾にしており、経済安全保障と国防は一体化している。米国にとって今は株価よりも国防を重視するだろうから、金融市場に何らかの「トランプショック」が年明け以降、起こる可能性は高まっている。

国防の点で筆者が非常に気になるのが、ロシアが北方領土にレーダー基地を設置したことだ。米中対立で両国が国力を消耗する様子をロシアが裏でほくそ笑んでいる。加えて、北朝鮮の動向も注視する必要がある。北朝鮮同様、中露が米国の制裁を受けて経済が低迷する中、米朝関係は行き詰まっており、北朝鮮の経済状況が上向くことはない。年初から地政学リスクは高まるだろう。

金融市場は国家対国家の戦場となりつつ、プレーヤーの数は減り、ここ数ヶ月はボラティリティが高まっている。年末年初は特に薄商いになることから、ボラティリティが高まる。2019-20年は冷戦が「金融戦争」と化し、波乱の年となりそうだ。そんな中、日本は今のままの状況で本当に生き残れるのか?かつての米ソ冷戦時代、日本は「漁夫の利」を得たわけだが、今度はそうは行かないだろう。

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