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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

金利低下、株価下落、ドル安へ 債券デリバティブ爆弾

 8月23日金曜日、ジャクソンホールの国際経済シンポジウムでFRBパウエル議長が「適切に行動する」と述べ、追加利下げを示唆した。その後、米中貿易戦争の報復合戦がエスカレートし、ダウ平均株価は一時745ドルまで大きく下げた。

 その金曜の夜、トランプ大統領は、ほぼ全ての中国からの輸入品の関税を引き上げるとツイートした。2500億ドルの中国からの輸入品に対して25%の関税を10月1日から30%に引き上げ、さらに、3000億ドルの中国製品への関税10%を9月1日から15%に引き上げるという。

参考記事 https://www.ft.com/content/2db9c1ec-c5b9-11e9-a8e9-296ca66511c9

 ここまで貿易戦争が激化し、通貨戦争も来るとなると、次回のFOMC(9月17-18日)で大幅な利下げ(0.5%)期待が高まっている。

 金利低下によって株価下落、ドル安へと金融市場は動くだろう。特に長期金利の低下は、逆イールドの深化を食い止めるためにさらなる短期金利引き下げを招くのだが、逆イールド以上にもっと警戒すべきものがある。大量のデリバティブである。

 経済アナリストの塚澤健一さんは、著書『いま持っている株は手放しなさい』で、デリバティブ600兆ドル(約600京円)の残高に対するブレクジットの金融的重大性に警戒感を高めている。デリバティブの8割は債券デリバティブである。

以下、そのあたりの本の内容をまとめると、

「これまでイギリスの取引所グループのLCHクリアネットがEU全体のデリバティブの清算機関となっている。そのシェアは圧倒的である。・・・(合意なき離脱が起こると)今まで使っていたデリバティブの清算機関が使えなくなるかもしれない。その場合、一挙にデリバティブを閉じなければならず、バタバタと売り急ぐ。デリバティブが駆け込みで縮小していく。・・・デリバティブは現物ではなく、「信用」なのでその信用が失われると、膨らんできた信用が一気に逆回転する。」

いま持っている株は手放しなさい pp.156-161)

 債券デリバティブを一番抱えているのがドイツ銀行で、その残高は5500兆円と言われている。EU全体のデリバティブで信用逼迫が起こると、リーマンショックどころではない「ドイツ銀ショック」となりそうだ。リーマンブラザーズを破綻に追い込んだ仕組み債、クレジットデフォルト・スワップ(CDS)やその関連保険商品(再保険も含む)どころではないほどの大量のデリバティブ(爆弾)がばらまかれているのだ。

 こうした大量のデリバティブが抱えるリスクをどう管理し、危機を防ぐか。長期金利を下げることで爆弾処理をしていこうというのが、今の中央銀行や国際金融市場参加者のスタンスである。しかしながら、爆弾処理の途中で次々と別の地雷が爆破されて連鎖的に危機が広がっていく可能性も高い。

 このコラムでもレバレッジドローンやそれを束ねた仕組債CLO、変動金利型(フローター)がヤバい!という話は伝えてきた。FRBは2015年12月から短期金利を9回上げてきたが、その間にフローターへの需要が高まった。しかし、FRBが利下げの方向に向かい、レバレッジドローンからの資金流出が増加している(グラフ)。この種の資産には邦銀大手も大量に投資をしている。

 こうした一度に大量の資金流出がある場合、売り浴びせでレバレッジドローンの価格が大幅下落し、信用逼迫の可能性が出て来る。

Investors flee leveraged loans

参考記事 https://www.ft.com/content/ed0c93fe-c522-11e9-a8e9-296ca66511c9

 以上のように、金融市場の裏庭のデリバティブやCLO市場で警戒感が高まる中、香港・台湾情勢、朝鮮半島情勢、イラン・中東情勢といった地政学リスクも確実に高まっている。10月1日は中華人民共和国70周年、そして、ジョンソン首相が目指す10月末までの合意なき離脱と、9-10月にかけて重大な危機への備えが必要である。

 日本に関しては、リスクオフへの動きから円のキャリートレードの巻き戻しでショートした円を買い戻す動きから円高へ動くだろう。そして、10月には消費税率の引き上げ、円高からインバウンド消費の下落、株価下落から、景気が一気に冷え込みそうだ。

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