1月のFOMCで量的緩和縮小を続けることになり、日本を初め、米国、英国、欧州市場で株価が大きく下げました。グローバルな資金は新興国株式などリスクの高い資産から米国債やドイツ国債といった安全資産へシフトしています。
こうした波乱気味の株式市場とは別に、IMFによる今年の世界経済の成長率を見ると、新興諸国の成長率は平均5.1%、中国の成長率は7.5%と高めです。比べて、先進国のなかでは米国の成長率(予想)が最も高くて2.8% です。日本と欧州の成長予測は2%に満たず弱く、根本的な構造改革を必要としています。
実際の成長率から考えれば、新興国株式は割安感が出て来たところで投資すべきかもしれません。しかしながら、金融市場はそれほど単純ではありません。
1998年のロシア危機では、ロシアが自国通貨建て国債のデフォルトを起こしたことで、米国の大手ヘッジファンド、ロング・ターム・キャピタルマネジメント(LTCM)が破綻の淵に追い込まれました。私は実際に、マージンコール(追加証拠金)がかかり、あるいはマージンデット(証拠金負債)で追い込まれるトレーダーたち、取引先の投資銀行からレポ・レートを急に上げられて苦しむヘッジファンドを見てきました。
金融市場で危機を起こすメカニズムでは、信用収縮による「急激な流動性の枯渇」で、もともと流動性のない資産を売り急ぐときに値がつかず、流動性の高い資産にまでもが売浴びせられ、ドミノ倒しのようなパニックとなります。津波のように押し寄せてくる売浴びせを止めないとシステム自体が機能しなくなり、マーケットの「サドンデス」が近づきます。マネーという血液が心筋に回らなくなる急性心筋梗塞のようです。2008年のリーマンショックのときも同様で、特にレバレッジが高くリスクが大きかった分、損失も膨らみました。
FT紙のMichael Mackenzie記者は、株式投資で積まれているマージンデットが昨年末で4450億ドルと、2000年と2007年のピーク時を超えていると警告しています(2月1-2日ウィークエンド版)。「山高ければ谷深し」です。
2月に入り、中国では新年を迎えました。FRBでもまたイエレン新議長を迎え、新体制に入ります。1月末まで勤めたバーナンキ議長はデフレと戦い、大胆な量的緩和を実施しました。しかし、ハイパーインフレをもたらすのではとの懸念を残しました。その出口戦略と金融市場の安定化はイエレン新議長に委ねられます。
もうひとつ気がかりがあります。中国で春節が終わり、田舎に里帰りしていた労働者たちが来週都会に戻ると、工場が閉鎖され、働く場がない、ホームレスになるといった事態が懸念されていると聴いています。危機が危機を呼ぶ不測の事態に備えるべき時と思います。
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