1.Generation(ジェネレーション) G
2007年に東京に居を移した頃、ある出版社から「企業の社会的責任CSR」について米国の現状を書いて欲しいという依頼があった。金融サービス業界ではヘッジファンドも含め、多くの篤志家が個人レベルで慈善事業を行っているが、企業をあげて社会貢献を実践する意味や歴史的な背景について、この依頼を機に、いろいろと考えるようになった。
金融危機の後ではでビル・ゲイツのような世界の大富豪の慈善活動を除くと、大方の慈善事業はこの金融危機で縮小を余儀なくされている。一方、CSRは、企業がいっそう草の根の市民運動との連携を強めるにつれ、社会貢献の意識は高まってきている。時代のエートスは、1980年代のGreed(強欲)から、1990年代のGlobalization(グローバル化)を経て、21世紀の最初の10年はGreenだった。エコへの目覚め、環境問題への取り組みをあらわす「G」である。若い世代では、環境保護のボランティアやNPO活動への市民参加などさまざまな領域で関心が高まってきた。Greenは言葉や文化はちがっても世界共通のテーマとしてわかりやすく、参加しやすい。インターネットを通し、市民活動の輪が世界に広まっている。
2011年からの10年を貫くGはGenerosity(利他主義)という、スピリチュアルなトレンドと思われる。日本にも「情けは人のためならず」ということわざとある。よく誤解されているような「他人に親切にしても自分の利益にはならない」というGreedな意味ではない。他人のためになるよう尽くしてあげるとまわりまわって自分のためになる、というのが真意である。
私たちはこれまでいくつものバブルに狂騒し、おカネや高級ブランドなど物欲に魂を奪われてきた。今回の金融危機とその破たんは私たちに強欲な醜い己の姿を見つめなおし、反省を促しているのかもしれない。世界同時多発不況の今、これは日本だけに起きている現象ではない。フラット化する世界では、国や文化が違っても、経済的な逼迫など市民生活中で人々が困窮する問題には多くの共通項がある。
人々の関心は、モノから心のあり方へ、そして人と人が心から心へとつながりたいと願うようになるだろう。まず、自身の内面に向かい、そして、自分と同じような思いや考えを分かち合いたいと願うようになるだろう。分かち合うという行動は、Generosityの中核をなす。まず、自分からは利益を求めず、ひたすら与え続け(Give-give-give)、その結果、まわりまわって自分に多く人からの善意がもどってくる(Given)。
Generosityの仕組みは、人を幸せにする。与えることで、何かに貢献できる自分を発見し、他人に喜ばれ感謝される自分に充足感と解放を感じるからだ。その仕組みが連帯や絆を求める人々へ広まり、新しい動きを作っていく。Generosityは、日本人の得意とする「おもてなしの心」と相まって、新たな啓蒙主義の実践ともいえるだろう。
こうした人々の新たなエネルギーは、新しい思想の枠組みやより自由な組織という器を必要としている。新約聖書にも「新しい葡萄酒は新しい革袋に入れなければならない、入れれば古い革袋は裂けてしまう」という一説がある。新しいエネルギーは、過去の旧い体制には向かわない。たとえば、Generosityは、キリスト教原理主義のような宗教上の結びつきや、ネオコンのような政治的な目的をもった結束へは収斂していかないだろう。
もっとも既存の宗教や政治団体は、この大きな変化に対応してゆくために、自らの存在意義を見つめなおす必要に迫られるだろう。原点復帰運動も活発になるかもしれない。たとえば、キリスト教にとってGenerosityとは「隣人愛」の原点にみてとれる。人間の営みの中でもっとも基本的な家族のあり方、共同体への帰属意識、人と人とのコミュンケーションの取り方など、すべてが変化してゆく過程にあると思われる。
かつて、ジャンジャック・ルソーの啓蒙主義がフランス革命に先行して、人々の思想を王族と貴族を頂点とした絶対王政から解放した。ルソーは主権は絶対君主ではなく領土に住む人々(人民)にある、個人の自由を国家は保障しなければならないと説いた。こうした自由民権論の思想は、王侯貴族の堅苦しい身分制度と相いれなかった。新しい思想には新しい枠組みが必要となった。旧体制に押し込めようとすれば、古い革袋が裂けるように革命が起こった。
Generosityが自発的に形成され、拡大してゆくにつれ、21世紀版啓蒙主義が政治体制への見直しも迫ることになるだろう。
2. Generation G のトレンド
ジェネロシティといっても、どこか抽象的である。具体的に世の中で見て取れるジェネロシティ・トレンドとはどのようなものか。ファッションや広告業界の人々が毎月購読している「トレンド・ウォッチング」というニュースレターがある。そこには、今世界で流行している、あるいは流行しそうなトレンドやコンセプトについてレポートが書かれている。金融業界の私も、コンテンポラリーな英語で書かれたこのトレンドについてのレポートを拝読している。
そのトレンド・ウォッチングがひも解くこれからのトレンド、「ジェネロシティ」とは一体何か。その実践編について、以下2009年に入ってからの「トレンド・ウォッチング」の内容に沿って、日本からみてピンとこないものもあるが、私の琴線に触れ、理解の範囲で、独断と偏見も混じっているかもしれないが、以下、まとめてみよう。
(ア) コラボ寄付
企業の社会的責任への意識の高まりや慈善活動に関して、最近は、企業が個人と共同で慈善活動に参画する新しいコラボ寄付形態がでてきている。
その一例として、グーグルでは「プロジェクト10100」を実行している。このプロジェクトは、人々を助けるために何をしたらよいか、そのアイデアをグーグルが一般から募集する。そしてもっともすぐれたアイデアに、グーグルが1千万ドル(10億円)を出す。アイデアは衣料、環境、地域社会、教育など多岐にわたる。昨年2008年10月10日の締め切りには多くのアイデアが寄せられ、100のアイデアに絞られた。そして年明け1月27日には一般からの投票でさらに20のアイデアが残り、最終的にはアドバイザリー・ボードが5つのベスト・アイデアを選んだ。
企業はお金を出すが、何にどう使うかは、市民がイニシャティブを取って決める、こうした企業と市民のコラボレーションは英国でもみられる。2008年7月、食料品チェーン店ウェイトローズは、店のあるそれぞれの地域社会に密着した慈善活動を実施している。同社は、ウィエトローズ・コミュニティ・マターズ・プログラムを設置し、各チェーン店で毎月1千ポンドを地域に還元する。どこへ寄付をするかについては、買い物客である地域の皆さんの総意で決めるシステムを採用している。
まず、ウェイトローズのお客様が地域の学校や病院ホーム、慈善団体など三つの団体を選ぶ。そして、どの団体へいくら寄付するか、その配分については、買い物に来てくれたお客様の投票で決める。店内には三つの団体の名前のついたカンが置いてあり、お客様はトークン(代用コイン)を思い思いのカンに入れる。月末になると、店のプログラム管理者がトークンを数え、三つの団体にはそれぞれの投票の比率に応じて1千ポンドを配分する。
米国の食料品チェーン店でも同様の試みがある。ホールフーズでは、エコバックで買い物に来てくれたお客様には投票用の5セントコインが渡される。お客様はいくつかの地域密着型の慈善事業団体の中から寄付先を選んでコインを投じる。
米国を代表するコカコーラ社では、アフリカの子供たちを救うために医薬品を寄付している。この活動コーラ・ライフ・プロジェクトでは、全世界に張り巡らされたコカコーラ販売網を活用し、コーラ運搬の先々でOral Hydration saltや教科書などを配布している。さらに、コカコーラ社は、一般市民のソーシャル・ネットワークにも呼びかけ、プロジェクトは6千人ものサポーターの善意に支えられている。
企業と市民がパートナーシップを組んだ地域密着型「共同(コラボ)寄付」は、効率的な慈善活動といえる。寄付を受けるのは地域の団体であるが、その構想や哲学はネットを通して多くに人々に共有され、そして実際にさまざまな地域で幅広く実践されている。
また、企業がネットで直接市民の投票を呼びかけるケースもある。トリップアドバイザー社は、”More than Footprints”イニシャティブを実施し、百万ドルを寄付している。同社は、独立した立場から客観的な旅行情報を提供している。月間ユーザー数二千五百万人、会員数1千万人を誇る世界最大のオンライン旅行クチコミサイトに成長し、旅行業界の新しいビジネスモデルともいえる。同社は旅行に関連した5つの慈善団体を選択し、それぞれの団体に百万ドルをどのように配分すべきかをネットでユーザーに呼びかけ、百万人以上に投票してもらっている。以下がその配分の内訳である。このような投票によって、市民がどのような慈善事業を評価し、必要性を感じているかがわかる。
- Doctors Without Borders(国境なき医師団) 39万2千ドル
- Save the Children(セーブ・ザーチルドレン) 34万7千ドル
- The Nature Conservancy 13万7千ドル
- Conservation International 7万ドル
- National Geographic Society 5万4千ドル
ネットでつながれた人々の共同体、ユビキタス社会では、いつでもどこでも情報を交換し、共有し、そして相互の知識をアップデート、アップグレードしながら、自在に拡大してゆく。このようなユビキタス・ソーシャル・ネットワークが政治運動や候補者への寄付活動に結び付いた場合、今回のオバマ大統領選出のように大きな社会的潮流に発展する。
食品や小売など個人消費と結びついた業界では、こうした慈善活動と個人消費者とが直接結び付きやすい。もう一つの例は、靴の小売店トムズ・シューズである。トムズでは靴一足をネットで買うと、一足分を靴を必要としている子供たちに寄付してくれる。トムズでは会社としてNPO「トムズ友の会 Friends of TOMS」を組織し、2006年には1千足、2008年には10万足を寄付している。
靴のほかにパソコン(PC)を子供たちに寄付する活動もある。アマゾンではOne Laptop per Child(子供一人にラップトップ一台)を掲げ、Give one, Get oneプログラムを開始した。この運動は2008年末に完了したが、PCの売れ行きには貢献しなかった。金融危機のせいか、あるいはもっと安価なネットブックが登場したせいか。世界にはPCを待つ子供たちがたくさんいる。この活動も今後さらに続いていくことを期待したい。
(イ) Eco Generosity エコ・ジェネロシティ
エコ・ジェネロシティとは「環境にやさしい」という漠然としたものではなく、環境保護のための具体的な行動計画を意味する。
例えば、英国企業ノバセム社Novacemでは、二酸化炭素削減に効果の高いセメント製造法を開発中だ。同社は、1トン当たりのセメント生産で0.4トンの二酸化炭素排出を抑えるほか、0.6トンの二酸化炭素を吸収する、つまり1トンの生産分の二酸化炭素を相殺するという革新的な特許を申請中である。ガーディアン紙によると、この技術は5年以内に実用可能となる。
もう一つの例は、オーストラリアのシドニーにあるエコチョ社Ecocho、ネット検索エンジンを提供してユーザーに植林を促している。検索エンジンはヤフーと提携し、検索件数が1千件を超えるごとに2本の木を植え、二酸化炭素排出削減に役立てようという試みである。2008年に始めたこのプロジェクトの最初のユーザーはオーストラリア政府機関で、最初の2本の植林も政府機関の支援を受けた。2009年2月の時点で、6千615本の木が植えられ、総じて330万7765キロの二酸化炭素を削減している。
「車が走ると空気がきれいになる」、こんな究極のエコ・ジェネロシティが可能なのだろうか。車は排気ガスを出す、という発想のまったく逆を行く。BMWのHydrogen 7seriesは、まさに走るごとに空気を浄化するエンジンを搭載しているという。水素で走るこの車は、Non-methane organic gases (NMOGs)と一酸化炭素を除去するなど、環境を改善する。
(ウ) Free Love フリーラブ
ネットで様々な情報をタダで見る。こんな便利性に多くの人が慣れてしまっている。いまさらお金を払うには抵抗がある。しかも、消費者は企業広告を信用していない。そんな消費者の注意を惹こうと、企業間の競争は激化。広告作りにはいっそうの工夫がかかせない。加えて公告するからにはどこかで収益を上げなくてはならない。
広告の創意工夫に熱心な企業の中には、エンドユーザーである消費者に参加してもらい、ニーズを吸収し、そのうえで新たな戦略を持ってエンドユーザーへ商品・サービスを売り込むというC2C(Consumer to Consumer)モデルを用意しなければならない。その仕組みとは。
フリーラブといえば、一昔前は「自由恋愛」のことだった。60年代のヒッピーのころだとフリーセックスを連想する。21世紀の現在、フリーはタダ、ラブは利他愛。まさにフリーラブこそ、気前の良い、ジェネロシティの実践である。その具体例のいくつかをみていこう。
英国のクリスピー・クリームは、オバマ大統領の就任を祝って、就任式前の1週間、アメリカンコーヒーをタダにした。お客様はお店に入ってバリスタに「Yes we can!」と叫ぶ、そうするとオバマ大統領の顔をなぞられたコーヒーが出てくるという仕組みである。
2008年12月にヒースロー空港のターミナル1で、大手銀行HSBCが実験的な試みを行った。これから飛行機で旅立つ人々が行き交うターミナルの一角に、インスタント本屋さんを設け、入口にはHSBC銀行員が立ち、HSBCのロゴ入りバインダーをもって、前を通る旅行者に手渡す。店内の雑誌コーナーは海外旅行、政治、経済、文化、健康、スポーツなどに仕分けされ、何種類もの切り抜き記事がルーズリーフ型にきれいに配列されている。バインダーを受け取った旅行者は、機内で読むための記事を選んでバインダーに挟んで持ち帰れる仕組みになっている。もちろんタダで。読みたい記事があるけれど雑誌一冊買うのは不便、といった人には利用価値が高いのでは。たった2週間の実験だったが、7154人がインスタント本屋さんを訪れた。しかし、実際に好きな記事をバインダーで冊子にしてもらって持ち帰った人は2030人だった。何で銀行がそんなことするのか?いまいち不明である。
「お望みのコンテンツを」というコンセプトであれば、オーストリアのトリップウルフ社Tripwolfは「貴方だけのプロ仕様の旅行ガイドブック」を作ってくれる。旅行好きの人々にとってはお得でうれしいサービスである。自分仕様のとっておきガイドブックはネットで注文し、PDFで送ってもらえる。しかもタダで。Tripwolfのサービス提供は、欧州最大の旅行ガイドの出版社MairDumontの支援を受けている。同社には旅行に関するコンテンツについては世界の25万もの都市についてデータがあり、個人のお客様の要望に合わせた情報のOEM化を可能にしている。さらに、同社だけで足りないコンテンツについては、ユーチューブなど弟3者の情報提供を利用している。例えば、ホテルの宿泊料の比較については、HotelsCombined.comの協力を得ている。
エコと「走る広告」を合体したのがエコキャブである。3輪車に屋根がついたようなかわいらしいタクシーで、3人まで乗れる。基本的に自転車を漕ぐのだが、補助用エンジンがついている。決めてはめいっぱいボディーに描かれた広告。この広告料でタクシー料金はタダだ。お客様はタダで目的地まで行けて、二酸化炭素排出を抑える環境保護にも貢献しできて一石二鳥である。ダブリンで始まったエコキャブは、トロント、ニューヨーク、シカゴにも広がっている。
「タダほど高いものはない」というのは昔の話になりつつある。これからは「タダほどエコのものはない」。
(エ) Brand Butler ブランド・バトラー
昨今の消費者はとても要求水準が高い。ネットで価格比較してから商品やレストランを選ぶ。安くて品質がよく、デザイン、サービスにも優れていないと買ってくれない。加えて口コミ情報にも通じている。お店に来てくれたお客様に対してブランドへの忠誠心を高めるにはどうしたらよいか、お店に来てくれない人々へもブランドを広めるにはどうしたらよいか。企業は必死に考えている。企業よりも情報ツウになった消費者との知恵比べにおいて、企業も相当の創意工夫が必要だ。
スウェーデン発祥の家具チェーン店イケアIKEAは、2008年には36カ国で展開するグローバル企業である。ニーズに合わせたDIY方式の家具でありながら、北欧風でシンプル、安らぎのある木を中心としたデザインが人気である。デンマークのイケア店では、市場調査の結果、デンマークでは店舗を訪れる客の20%が自転車でやってくることがわかった。そこで、買い物客に商品を積んで持ち帰るためのトレーラー付自転車をタダで貸し始めた。
もともとイケアの家具は組み立て式で、梱包や分解に効率よく作られている。これは流通や製造コストの削減にもつながっているのだが、加えて、車の小さなトランクでも積めるコンパクトなサイズにしてある。じつに自転車の後ろにトレーラー(リヤカー)を引っ張るじつにエコ・フレンドリーな特徴がにじみ出ている。自転車やトレーラーにはIKEAのマークが大きく見え、走る宣伝広告バイクともいえる。バイクは店を訪れてくれる人々にタダで貸し出している。買っても買わなくてもだ。となれば、人情としては家具を買ってバイクに積んで家に帰ろう、という気になる。このIKEAバイクこそ、イケアのブランドをお客さまに運ぶバトラー(執事)なのである。
2008年11月にヒースローとチューリッヒ空港の一角に「Help Point Booths」(お助けブース)が登場した。旅行者が気軽に立ち寄ってインターネットを見たり、携帯電話をチャージするブースである。そのほかにはコンシェルジェ・サービスがあり、ちょっとしたクリーニング、例えばシャツについたコーヒーのしみ抜きなどをしてくれる。もちろんタダで。スポンサーはチューリッヒ保険会社である。同社は市場調査を行い、保険会社が消費者の15%しか信用されていなくて、かつ冷たくて陰湿なイメージがあることを知った。そんなマイナス・イメージを払しょくしようと、涙ぐましいサービスを始めたのである。お助けブースにはチューリッヒ保険会社のZマークが光り、まさに主人に仕えるバトラーのごとく、お客様にサービス精神で臨む態度表明のブランド・バトラー戦略といえる。日本の保険会社も見習ってはどうだろうか。
(オ) Try + Advertising = Tryvertising (モニター広告)
買う前にその商品をお試しできる、モニターできる、タダでトライヤルできる、そんなコンセプトである。本当に効能があるのか確かめてから買うというやり方は、消費者の信用を勝ち取り、それから商品を引き続き買ってもらう長期的な戦略である。富山の薬売りはこの方法で全国に特産品の薬を売り歩いた。家庭の常備薬として頭痛や腹痛などいくつかの商品を置いてゆく、そして使ってもらい、また訪問しては販売を重ねて行く。
カリフォルニアでは、赤ちゃん専門のオーガニック・フード、ポム・ベベPomme Bebeはすてきなアンテナ・ショップで、独自のベビーフードをお客様にタダで体験してもらっている。その名も「テースティング・バー」とおしゃれ。バーの前の補助椅子にすわるのは赤ちゃんたち。
(カ) Random Acts of Kindness 一日一善運動
どんなブランドでもお客様に宝くじに当たった気分になってもらえたら、そのブランドに対する忠誠心は消えないだろう。企業としてはいつもサプライズ・ギフトを用意してお客様に喜んでもらう。このキャンペーンを長く続ければ、一度っきりのマス・マーケティングよりも効果は高い。
北アイルランドのファッション・ブランド、ARK(Acts of Random Kindness)社はロゴのついたTシャツを販売している。ARKロゴのTシャツを着た人には、善行をするよう呼び掛けている。友達にコーヒーをおごる、バスで席を譲る、どんな親切でもよい。「小さな親切、大きなお世話」としらけないために、ARKロゴTシャツの人は、家族や友人にどんな善行をしたかを話し、行動を広げていかなければならない。同社のTシャツはARK運動の象徴となっている。
ジェネロシティとは、「個人が主体」という時代をシンボリックに示している。企業は個人と個人をつなげるお手伝いをする媒介にすぎない。かつてITは企業から企業への商流を促進するB2B(Business to Business)のツールとして活用された。やがてITが一般社会に普及するにつれ、ITは企業が消費者へ提供する広告やその他のサービスに必要なツールとなり、B2C(Business to Consumer)のビジネスモデルが発展してきた。今は、ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)の広がりからも、ITは個人と個人が自発的につながろうとするお手伝いをするツールとしてますます利便性を高めている。
企業の広告活動にとっては、これまでのように一方的に消費者に情報を提供するやり方(B2C)ではなく、消費者と消費者を結びつけることで社会的な付加価値を高めていくC2C(Consumer to Consumer)やり方のほうが効果的である。地元の人々が相互に結び付くことで地域の慈善活動がより活発化し、企業も含めて参加者全員がWin-Winを達成する。Generosityこそ、企業のCSR活動にとってもっとも貢献度が高く、しかも顧客満足度も高いサービスをもたらすこととなるだろう。