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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

ドル安・株高はいつまで続くか?

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ドルキャリとグローバル・アセット・バブル、そしてやばいドバイ

テキサス男のジョン・モールディンとは10年近く前にマンハッタンで会った。それ以来彼からEレターをもらっている。ドバイ・ショックより1週間ほど前のEレターで、ジョンはドルの行方について興味深い意見を述べている。以下まとめてみよう。

過去9カ月でドル安と株高の相関性は90%と高まっている。ドル安になれば株式市場が上昇し、株式のみならずジャンク債などリスク・アセットへも資金がシフトする。これは「ドル・キャリー・トレード(ドルキャリ)」に起因する。

オバマ政権は、巨額の赤字(貿易赤字と財政赤字)を見込んでいる。医療改革が本格化すれば一体いくらかかるのか想像すらつかない。借金を重ねるのでFRBはゼロ金利に誘導したい。それを見越して、世界は「ドル以外ならばどんな通貨でもOK」といわんばかり(これをADB、Anything But Dollarと称する)。こうしたADB状況で、グローバル投資家は、ドルで借り入れて、リスク・アセットを買うドルキャリを行う。ドルがさらに弱くなると見ているからだ。

ドル安は中国など米国債保有国に米国債の価値下落に加えて、もっと大きな心配をもたらした。FRBが今後12-18か月にわたり利上げをしないとの見方から、アジアのリスク・アセット・バブルが起こり、株と不動産の投機的な価格上昇が懸念された。この表面的で投機的な盛り上がりが新興諸国の回復をイメージ作りに貢献した。例えば「中国が世界の景気回復をけん引する」とか言われたのだ。

それもつかの間。今「ドバイ・ショック」で、市場参加者が信用不安からいっせいにリスク・アセットを投げ売り、安全な資産へ「質への逃避」を行っている。この動きで世界の株や商品(コモディティ)価格は下落し、米国債など信用度の高い債券の価格が上昇する。そうなると米国債のイールドは下がり、金利はますます低くなる。

この米国ゼロ金利こそ世界の迷惑だという香港のドナルド・タン氏の指摘通り、新興国は投機的バブルに見舞われ、ベトナムやブラジルでは自国通貨の平価切り下げに踏み切る。人民元は大丈夫か。

仮に世界景気が回復する兆しが見えて、貿易が再び活発になればどうか。ドル高に転じるかもしれない恐怖から、ドルキャリ解消のために大きな巻き返しが起こるだろう。ドル安を見込んでショートを振っていた人々が買い戻しに入り、短期的にドル高から株価下落と予想される。

どちらの場合でも二番底を打った実感がないままでは、世界の景気も上向かないのでは。

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