グローバルストリームニュース
国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

またもやToo Little, Too Late

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 福島原発の危機を救えるのはオールジャパンのレスキュー隊だ。彼らだけがリスクに立ち向かい、身を呈して日本国民の生命と財産を守ろうとしている。昨夜TVの首相声明は遅すぎるし、内容も具体性を欠き、気概も思想も感じられなかった。またもやToo Little, Too Late

 私はこれからの日本の危機管理に大きな疑念がある。既にグローバルなメディアの注目はリビア、サウジ、バハーレンなど中東へ移っている。日本のエネルギー資源の多くはペルシャ湾岸からの原油に頼っている。中東情勢が危機的な状況になれば、その代替となるのは原子力発電である。福島原発の危機管理ができなければ、浜岡原発はどうなる?日本のエネルギー政策はサステイナブルなのか?こうした疑念は日本経済にとって致命的にとなる。

  私は原発そのものに反対ではない。しかし東電や経産省の保安院の対応から見ていると、危機認識と管理、経営体制に問題がみてとれる。現場の把握ができない、対応が遅れる、政府や経営陣は国民の安全よりも自らの保身、責任逃れを優先している、すべて人災である。これを繰り返さないためには、残りのすべての原発施設に対して安全体制の見直しと手当てを緊急に行うべきだ。

  かつて『日本の思想』で丸山真男氏が指摘した「たこつぼ化した無責任体制」が経営陣に蔓延している。日本のメインストリーム(政官財)は何も変わっていない、むしろ、民主党政権下、官僚と財界の関係は悪化し、グローバル化する世界から一層遠のいている。

  世界の注目は日本から中東へ移りつつ、日本は無責任体制を放ったままでは信頼を失ってしまう。いつまでも市井の人々の善意やボランティアといった美談に頼ることはできない。国としての復興ビジョンとそれに沿った資金(=実弾)を手当てし、アクションプランを示さなければ、これから直面する経済的困難を乗り切れないだろうし、グローバルマネーは日本へ向かわない。

  原油価格と金価格の上昇に伴い、金融不安への津波は日経平均を押し下げ、日銀のマネーサプライが十分でないことから円高になるだろう。これで日本国債格下げの懸念が広がれば踏んだり蹴ったりのシナリオとなる。

  自然災害は人災へ、そして政府のリーダーシップのなさ、無知無策が国を滅ぼさないことを祈る。

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