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国際金融アナリストの大井幸子が、金融・経済情報の配信、ヘッジファンド投資手法の解説をしていきます。

震災復興には財源と電源確保を

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 東京在住の米国市民には退避勧告、放射能に対する予防や必要な薬の配布など毎日のように米国大使館からメールが届く。放射能については米国の原子力規制委員会(NRC)、放射能への対処については米国疾病センター(CDC)がきちんとしたデータをもとに予想されるリスクへの対応をしている。事態の起こりうる先を読んでどう行動すべきかを伝え、自国民を守る、これを米政府は行っている。だからこそ、米国市民は平時から政府を信頼し、税金を払う。

 翻って日本はどうか?国民には後ろ向きのあやふやな情報しか与えない。管首相は東電の情報をうのみにし、東電という一私企業の利益を優先し、福島県民そして日本全体に多大な損害を与えた。放射能汚染は数十年にわたる人災である。加えて計画停電は地方の中堅企業の活動に多大な損害を与えた。少し前にトヨタ自動車が米国でリコール問題が起こした時、本社社長が米国議会にまで飛んで行って消費者である米国民に謝罪した。トヨタに比べて東電社長は棺桶に入ったふりをしているのか。日本が政府として機能不全であることは既に海外メディアで報じられている。東電の対処は世界の批判の的であり、オバマ大統領の原発政策に冷や水をかけたのみならず、世界の原発業界そのものの活動を止めてしまった。

 震災の損失額はストックだけで25兆円程度、そしてフローの損失はその数倍となるだろう。復興に関してボトルネックになるのが財源と電源。資金の有効活用と電力の安定供給がキーである。

 海外からは日本にはゆうちょや公的年金など大きな資金があるはずだと見られている。確かに戦後の高度成長で蓄積してきた国民の貯蓄を切り崩すして復興資金に充てるしかないだろう。問題はその先、資金の使い方である。昭和20年の戦後、焼け野原からの復興期には、志の高い政治家と清貧で優秀な官僚が力を合わせた。今はどうか。子供手当でもめるような政府が思い切った復興政策を取る能力があるのか?

 東電の株価からすると東電の株主には申し訳ないが、JALのように国有化するしかないだろう。当分原発なしでどのような資源エネルギー政策が可能なのか、電源開発を中心に早急に望まれる。政府は国民に節電を呼び掛ける前に、総力を挙げて電力安定供給のための指針示すべきだ。

 繰り返すが、日本がV字回復する手前には、財源と電源の問題がある。ルモンド紙(3月23日付)によると、震災への資金繰りで日本の財政赤字はGDPの220%を上回る。ムーディーズの知人によれば、日本国債はこのレベルでは格下げ手前の「ネガティブな見通し」になりそうだという。新たな借金は金利上昇圧力になるものの、日本国債の96%は国内の投資家が保有しているので日本人さえ忍耐すればよい、というわけにはいかない。同紙によれば、日本が資金繰りのために米国債を売るなど外貨資産の切り崩しに入ると米国の金利上昇を招き、米国の景気の足を引っ張る。

 電力確保は日本の競争力のある中堅企業に生き延びてもらうためには必須である。東電は大口(大企業)には安い電力を供給してきた。しかし、今回震災の被害にあったのは、比較的新しく東北地域で稼働し始めた精密機械や部品メーカーなど成長性の高い中堅企業、技術研究所などである。もともとこうした企業は海外へ拠点をシフトさせようという中期計画があった。政府の対応が遅れれば、企業は生き残りをかけて(政府を頼らず)、海外へ移転してしまう。

 さらに、従来過小資本の日本企業の体力が弱ったところへ海外から買収の波がやってくる。米国は海外のM&Aを活発化させており、日本企業の買収リスクはたかまっている。こうした将来のM&Aを見越して、割安感のある日本の優良銘柄は買われるだろう。

 海外投資については、天然ガスを持つロシアは、揺れる中東や福島原発の問題の中で、「漁夫の利」を得ている。それから、日本の中堅企業が震災で操業停止になり、サプライチェーンで困っているのが中国や韓国である。中国の生産規模が縮小すれば原材料やコモディティが値を下げるだろう。

 欧州では、ポルトガルなどソブリン債デフォルトの悪夢がEUを覆う。英国では年金基金など大手機関投資家がインフレに備えた運用へ体制を切り替えている。トリシェ総裁は利上げに踏み切ると予想され、インフレ警戒態勢に入るだろう。

 イエメンやシリアにまで飛び火した中東民主化のドミノ現象、そして、米国はどちらかというと傍観している。世界は米国一極による覇権主義から急速に大変動を起こしつつある。

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